脳梗塞・心筋梗塞の予防法

RAP食でプラークが退縮し、股関節痛が完治した1例と膝関節痛が消失した1例

日本整形外科学会のホームページによれば、変形性関節症の解説において、「加齢に伴って増加し、女性に多い」、「関節症では機械的刺激などにより軟骨の変性・磨耗を生じ、また関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性が加速します。」「治療法として、軟骨磨耗の防止に効果的な治療法は確立されていません。関節症の悪化の防止には適度な運動負荷と肥満の改善や労働量の調節、関節炎のコントロールが必要です。また機能的な治療として関節周囲の柔軟性の維持と周囲筋力の維持が大切です。」と、記載があります。

加齢に伴って増加し、根本的な治療が困難な多くの疾患においては、動脈硬化(プラーク)が大きく関与しています(脳、心臓、眼、頭髪、関節、歯肉、耳、皮膚など)。今まで、プラークは治せない医学の領域でしたので、整形外科領域においても、対症療法や関節に負荷をかけない医療、筋力を増すなどして局所にストレスがかかりにくい方策、などが医療における治療の基本かと思われます。

でも、プラークが治せる医療では、軟骨膜に存在する毛細血管の復活(ゴースト血管の復活)で軟骨膜が復活し、軟骨の再生が促される可能性も考えられます。

今回は、動脈プラークの退縮に伴い、組織の小動脈の血流が再開・増加し、組織の自然治癒力が増強され、その結果として軟骨が再生され、10年来の股関節痛が完治したのではないかと考えられる症例と、同様の理由で、2〜3年前からの膝痛が消失した症例を提示します。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」


『RAP食でプラークが退縮し、10年来の股関節痛が完治した1例』

Case 1. 70歳(図1)
まずプラークがRAP食で確実に改善している事実をご覧ください。

図1

<家族歴>
父:**歳狭心症、68歳他界
母:TIAあり、85歳他界
夫:68歳:心筋梗塞で他界
<初診時までの経過>
1990年9月 TIA(一過性脳虚血発作)
1997年頃〜 ダンスを趣味とする
2002年2月頃から糖尿病 薬&インスリン開始
2006年6月 糖尿病性網膜症 左眼失明
2006年11月 多発性脳動脈狭窄症 指摘
2007年7月 頃〜スタチン剤(コレステロール低下薬)開始
       この頃から股関節痛による歩行障害で杖を使用開始。ダンス不可能に。
2008年8月 狭心症で冠動脈ステント2本、留置
2009年9月 多部位の冠動脈にステント1本、留置
2016年12月 頭部MRA: 左内頸動脈・右中大脳動脈・左前大脳動脈の狭窄進行
脳外科Drより:「救急車をいつでも呼べる体制でいてください」との指導あり
        RAP食開始 70Kg
2017年1月 視力 左眼:失明 右眼:0.7〜0.8

2017年2月:当院初診  歩行障害+(杖が不可欠)、体重:64.5Kg 身長:156cm

<2017年2月初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=3.72mm((A-max)
右鎖骨下動脈=3.02mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=1.72mm
左頸動脈分岐部IMT=2.99mm(C-max)
右総頸動脈IMT=0.72mm 左総頸動脈IMT=2.25mm
右大腿動脈IMT=3.54mm(石灰化)(F-max) 左大腿動脈IMT=3.10mm(石灰化)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=13.27 mm

<初診時の服薬状況>
1. バイアスピリン(100)1,1x (血液サラサラ薬:抗血小板剤)
2. シロスタゾール(100)2,2x (血液サラサラ薬:抗血小板剤)
3. イコサペント酸エチル粒状カプセル(300)6P,3x (ERPA製剤:弱い抗血小板剤)
4. ピタバスタチンCa(1)1,1x (スタチン剤:コレステロール低下薬)
5. ファモチジン(20)1,1x (胃酸を抑えて・・胃潰瘍予防薬)
6. カルデサルタン(8)1,1x(高血圧の薬:降圧剤)
7. アムロジピン(5),2,2x(高血圧の薬:降圧剤)
8. ジャヌビア(25)1,1x (糖尿病薬)
9. メトホルミン塩酸塩(500)3,3x(糖尿病薬)
10)メコバラミン(0.5)1,1x (Vit B12欠乏症薬)
11)フェブリク(10)1,1x (尿酸を下げる薬)
・・毎月の薬代 約2万円の支払い

<2016年12月(RAP食を知り得た日)までの食習慣歴>
食習慣点数=1047点 甘いもの:大好き、肉:大好き、野菜:大好き、魚:大好き、揚げ物:大好き、運動:普通
・週に4回はパン食でバターorマーガリン付けて。
・酒類(―)、タバコ(―)、50年間毎日普通のヨーグルト100g、2007年まで40年間普通の牛乳200cc/日.

<プラークの経過>

血管の部位 2017/2(IMT) 2017/12(IMT) 2019/1(IMT) 2019/6(IMT)
腹部大動脈 3.72 mm 2.27mm



右鎖骨下動脈 3.02 mm 2.49 mm 2.13 mm 2.08 mm
左総頸動脈 2.25 mm 1.99 mm 1.94 mm 1.58 mm

<初診直前の視力>
2017年1月 右眼視力:矯正で0.7〜0.8

<初診までの股関節痛の経過>
20年前からダンスをやっていて、10年前から体重増もあり股関節痛が出現し、杖を手放せない生活(杖なしでは10歩以上は歩けない状態)になるも、病院通いが多くて整形への受診はない。歩行時の痛みなので、変形性股関節症が最も考えられる。
2017年2月 初診時 “杖を使いゆっくり歩き状態”で診察室へ来室。

治療:
1. 本人希望と担当医の同意得て、スタチン剤(ピタバスタチン)中止。
2. RAP食を具体的に指導
3. 便秘もあり、ビフィズス菌製剤(ラックビー微粒N,2g,2x) 開始。

結果:
1)歩行時の股関節痛が消失。:2017年11月 再診時には、杖は全く不要でシャキシャキ歩けて1時間以上も歩けるし、小走りも可能になる。2019年9月時点でも股関節痛は完治状態。ダンスも可能。 自宅に入る後ろ姿をご近所の方が見られて・・・「見知らぬ人がご自宅に入っていかれた」と不思議に思われ、尋ねられたそうです。体型も歩く姿も全く別人になられました。

2)視力が改善。:2017年7月 右眼視力:矯正で1.0 まで視力改善。 2047年11月 には、右眼視力:裸眼で1.0 までに視力が改善! 眼科Drが久留米受診に強い興味を示していただく。

3)糖尿病・高血圧の病状の安定。:服薬数・量の減少となる。薬代も減少。2017年7月(初診から5ヶ月目)には、アムロジピン(5)1、ジャヌビア(25)1、フェブリク(10)1、メコバラミン(0.5)1 が中止。ラックビー微粒N,2g,2xは追加で継続中。2018年7月には、アムロジピン(5)1→ (2.5)1へ減量。メトホルミン塩酸塩(500)3→ 中止。 糖尿病・高血圧の病状の安定で・・降圧剤が減量。糖尿病治療薬は中止に至る。
初診時の薬代が毎月約20,000円→約5,000円に減少。経済的に随分楽になる。

4)脳動脈の狭窄の程度が改善。:2017年11月時点で、脳外科のDrが久留米受診に興味を持ち、食事療法・久留米受診に協力的になる。

5)体重が減少。:RAP食前(2016年12月):70Kg→初診時(2017年2月)64.5Kg→2017年8月:57Kg→219年9月:最新RAP食で65.0Kgへ体重復活。

6)髪の毛が黒くなってきた。:毎月の髪染めが→4ヶ月に1回の髪染めに減った。

7)2017年2月以降、2019年9月まで、冠動脈の再狭窄なし。

考察:
今まで、食事療法で関節痛を根本から治療するという発想は存在しませんでした。漢方でも、関節の炎症や腫脹、むくみなどの症状を和らげるのが目的です(未病を防ぐ)。動脈硬化を治すということは、大〜小動脈のプラークを減らすということで、同時にゴースト血管になった毛細血管を復活させるということです。毛細血管が復活すれば、自然治癒力が高まり軟骨や血管壁などの組織を、損傷前の状態に自己再生能力で復活できる・・ということです。そうすれば、局所のストレスで起こる初期の炎症や腫脹を、初期の段階ですぐに免疫細胞などが修復するので、未病になる原因そのものの治療になるのです。

この方の股関節症?が治ったのも、体重減少も効果的だったとしても、効果の主役はプラークが減少し、小動脈のプラークが減少し、軟骨膜の毛細血管が復活し、正常な軟骨が復活したためと思われます。

この方の、普通は治るはずのない視力が復活しているのも、眼底の網膜の動脈硬化が改善し、ゴースト血管が復活して、網膜細胞の復活?のおかげでしょう。髪が黒くなったのも、頭皮のゴースト血管が復活したために髪の毛に栄養供給が以前よりも盛んに行われているから・・と思われます。

初診時にスタチン剤(コレステロール低下薬)を中止いただいた理由は(動脈硬化の未来塾 52))をご覧ください。


『RAP食でプラークが退縮し、膝関節痛が消失した1例』

症例2. 80歳女性
主訴:疲れた時の月に1回の動悸 & 5ヶ月前からの胸部圧迫感
家族歴:夫;81歳で心筋梗塞によりステント留置-その入院中に脳梗塞。
現病歴:
1999年9月頃よりスタチン剤服用開始。降圧剤服用開始。
2009年9月頃〜バイアスピリン(100)1,1x開始 EPA製剤(600)3P,3x開始
2016年3月頃〜右膝痛でスイスイ歩けない状況になる。
2018年10月頃〜胸の圧迫感(1/月程度)が出現
2018年12月 心臓検査入院  冠動脈CT:軽度のプラークあり。治療不要と。
       頸動脈エコー:異常なし:大丈夫と説明あり。
2019年1月〜 月に一度、疲れた時に動悸があり、不安になる。

2019年3月 当院初診  体重54Kg 身長147cm BMI=25.0 BP=130/70 P=78(整)

現在の症状:
月に1度の動悸、月に1度の胸部圧迫感、右膝痛(2〜3年前から)、月に1回頭痛、肩こり++(10/10)、右足の血流が悪い感じ(むくんだ感じ)、右膝痛でスイスイ歩けない。

食習慣:甘いもの:好きでない、肉:普通、野菜:普通、魚:普通、揚げ物:嫌い
食習慣点数=270点  「毎日オリーブ油を使って野菜炒め、週3回は魚料理(サバ、マイワシ、ブリ、マグロ赤み)」「豆乳を毎日コップ1杯摂取・納豆を隔日で1パック摂取」

服用中の薬:
1. バイアスピリン(100)1,1x
2. アトルバスタチン(5)2,1x
3. EPA製剤(600)3P,3x
4. アムロジピン(5)1,1x
5. ネキシウム(20)1,1x

8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=2.39 mm(後壁の石灰化) (A-max)
右鎖骨下動脈=1.80 mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=0.94 mm
左頸動脈分岐部IMT=1.12 mm(C-max)
右総頸動脈IMT=0.77 mm 左総頸動脈IMT=0.97 mm
右大腿動脈IMT=1.42 mm(F-max) 左大腿動脈IMT=0.87 mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2(0〜4)******

治療:
本人・ご家族の立場を考え、スタチン剤は現状のまま服用しながらのRAP食を行なっていただいた。プラークが退縮した段階でスタチン剤の中止をお願いするということにした。
本例のプラークの原因は、高脂血症ではなく、毎日のオリーブ使用の油炒め料理(動脈硬化の未来塾 54))や、脂質が多い魚の摂取と思われる(動脈硬化の未来塾 86))ので、それらの摂取を制限。
豆腐(1日1/4丁)以外の、豆乳や納豆を控える(動脈硬化の未来塾 87))。魚を低脂質な魚へ変更する・・などを指導。

結果:
図2. RAP食の5ヶ月で、腹部大動脈と右鎖骨下動脈の石灰化が明らかに退縮した(下図)。

注)スタチン剤を服用していても、プラーク治療にはハンデイにはなりますが、プラークが退縮しないことはありません(動脈硬化の未来塾 77))。 でも、本例でも明らかなように、19年以上もスタチン剤を動脈硬化のために・・予防的に服用し続けても、その効果はRAP食による5ヶ月の動脈硬化治療にも及ばない(上図)ということは・・事実です。

<RAP食開始時と5ヶ月後の血管プラークの状況>

血管の部位 2019年3月(IMT) 2019年8月(IMT)
腹部大動脈 2.39 mm→ 1.74 mm
右鎖骨下動脈 2.25 mm→ 1.58 mm
右大腿動脈 1.42 mm→ 1.19 mm

<自他覚症状の・・5ヶ月後の変化のまとめ>

1)プラークは明らかに退縮した。
2)胸の圧迫感が消失
3)2〜3年前からの左膝痛が完治し、スイスイ歩けるようになった。
4)動悸が消失
5)頭痛が消失
6)肩こりが減った(5/10へ)湿布薬の使用が半減。
7)血圧が低下 2019年4月にはBP=130-150/70-80程度→ 98-119/70程度に血圧低下。
8)体重が54Kg→50Kgへ減。(BMI=25.0→23.1)

考察:
本例のように、RAP食で石灰化も治る(動脈硬化の未来塾 82)) ということは、関節内の組織の損傷と、修復機能低下(ゴースト血管化・動脈硬化などで)によって、異常に増殖した軟骨や骨化した組織も正常状態に向かって修復が進んでいるものと思われます。
石灰化などの異常な状態を元の状態へ戻すという・・物理的な力を伴う復元作業は、免疫細胞がそれぞれの目的に応じた脱分化(変身:化身)を行なって仕事をしているおかげであり、医師はその患者さん自身の免疫細胞の働きを助ける・・あるいは邪魔をしないことが“根本的な治療のための医学”と心得る必要がありそうです(動脈硬化の未来塾 100))。

加齢の代表的な現象と考えられている動脈硬化(関節内の毛細血管のゴースト化・細小動脈の動脈硬化)が関節症を誘発しているという仮説が正しければ、プラークを改善させると関節症になり難い身体を手に入れることができるかもしれません。

しかも、プラークが改善すれば、軟骨膜の血流も改善され、軟骨が正常に戻る大きな手助けとなりますし、全身の末端の組織の低酸素状態も改善され、例えば大腸ポリープの発生も減少し、がん化のリスクも低下する(動脈硬化の未来塾 5))ものと期待されます。

本例の膝痛は、単なる加齢ではなく、オリーブオイルを毎日摂取するなどの、過剰な脂質摂取がもたらした動脈硬化と体重オーバーが主な原因であったとも考えられます。そうであるなら、現在の食事を続ければ、膝痛の発生も、胸の圧迫感も、頭痛も、動悸も将来にわたって再発しないものと思われます。血圧薬も中止が可能でしょう(動脈硬化の未来塾 56))
なお、RAP食による4Kgの体重減も膝痛解消の大きな要因として挙げられます(下表)。

参考データ:“膝痛とプラーク進行度の関係”を調べてみました。
膝痛の既往がある女性71名(50歳以上)と、膝痛既往のない女性、および臨床経過中も膝痛の出現が認められなかった女性1187名(62歳以上)を、T-maxを使って膝痛と動脈硬化(プラーク)の関係を調べましたが、プラークの程度と膝痛との関係性は認めませんでした。しかし、膝痛とBMIとは非常に明らかな関係性を認めました。BMIを2.0低下させるとひざ痛は改善すると思われます。 症例2ではBMI: 25.0→23.1ですから、RAP食による4kgの体重減がひざ痛治癒の大きな要因かもしれません。

膝痛の既往or
経過で膝痛出現例(女性)
T-max(平均+-SD) 平均年齢 BMI
あり: 61人  7.43±2.66 mm 69.1±7.4(≧50歳) 24.7±4.3
なし: 1187人 7.54±2.71 mm 69.3±5.8(≧62歳) 22.1±3.3
Student’s t-test (検定) 有意差なし (平均年齢を調整) P=0.0000000005

注)T-maxは集団の平均年齢に非常によく相関するので、2群の平均年齢が同じになるように調整したため、膝痛なし群は62歳以上とした。

結論:
動脈のプラークを、意図して減らせるRAP食は関節症による関節痛の根本的な治療法となりうるかもしれません。

特に原因不明の・・一次性とされる関節痛の皆さま、RAP食を4ヶ月行なってみてはいかがでしょう。RAP食は、書籍「脳梗・心筋梗塞・高血圧は油が原因」(幻冬舎2018年)と(血管エコー実例・研究・・29))をご一読ください。

RAP食は突然死を防ぐのみならず、「健康長寿」「がん予防」「皮膚・毛髪美容」の食事療法かもしれません。

2019年9月24日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄


「脳梗塞・心筋梗塞の予防法」目次へ戻る

Dr.真島康雄のバラの診察室

携帯版のご案内

お知らせ

リンクページ