脳梗塞・心筋梗塞の予防法

高血圧でなくても、高血圧治療中でも脳梗塞・心筋梗塞になり・再発する!

当院でのデータですが
1)高血圧で服薬中の人は、高血圧でない人よりも1.8倍も脳・心血管イベントを経験していました。

2)高血圧で服薬中の人は、高血圧でない人よりも血管壁は肥厚(動脈硬化は進行)しており、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル3以上である脳梗塞・心筋梗塞の予備軍(参照1)が1.3倍多かった。

高血圧の薬を服用しているから脳梗塞・心筋梗塞になりやすいのではなく、表に示すように、高血圧の人は動脈硬化(T-max高値)が顕著であるために高血圧になる人が多く、その結果として服薬する人が多い・・・

つまり・・・動脈硬化の結果として脳梗塞・心筋梗塞などのイベントを起こしやすい・・ということなのです。(参照2

だから高血圧を治せば・・一見すると・・脳梗塞や心筋梗塞が減りそうですが・・
このような期待を込めた考え(天動説)(参照3)が現代医学の常識でした。

同様に喫煙する人にイベントが多いのは事実ですが・・・血管壁肥厚させる(動脈硬化を進行させる)食習慣の人は喫煙率が非常に高いわけです。(参照4

だから同様に、・・禁煙すれば・・一見すると・・脳梗塞や心筋梗塞が減りそうですが・・科学的に考えれば、食習慣の変更なしに禁煙しても効果的であるはずがありません。

話を戻しますと、高血圧は血管壁肥厚(動脈硬化)の単なる結果と捉えれば、薬で血圧を強制的に下げても・・・血管壁肥厚が薄くなるわけはないのですから・・・イベントは少なくならないのです。

さらに、図のデータを横読みすれば、イベント114例中57例(50%)は高血圧ではなかったのです。

このことは、動脈硬化が進行しても血圧が上昇しない(血管が柔軟なのか?)方が結構いらっしゃるということになります。

血管壁肥厚の最大の原因は食習慣(参照4)ですが、血管壁が肥厚するということは動脈硬化(太陽)が進行するということです(参照3)。

その結果として、高血圧を管理しても心筋梗塞・心筋梗塞の再発および脳梗塞・脳梗塞の再発が普通に起こるわけです。

最近の報告では、PCI(冠動脈ステント治療など)治療を行っても大きな予後の改善は出来ていないらしいのです。

治療部位以外の冠動脈がプラークなどで狭窄する・・心筋梗塞の再発が約50%もあるそうです・・この事実を真摯に受け止めれば、PCIの御陰で症状は消失しても、動脈硬化の進行はストップしない・・・ということです。

心筋梗塞や脳梗塞後なら、病院の管理下にあるわけで、血圧が高ければ当然コントロールされている・・なのに・・同じ冠動脈や異所冠動脈が狭窄する・・・

これは、高血圧管理が動脈硬化の進行を制御出来ない証拠ではないでしょうか。
このことは米国の糖尿病学会の疫学調査(ACCORD試験)でも2010年に確認されました。

と・・いうことは・・高血圧は動脈硬化と関連はあるが、動脈硬化の根本原因ではないことになります。

薬に頼り(信じ?)過ぎて慢心し、食習慣を変更しない人は2度、3度も心筋梗塞や脳梗塞を再発しても全く不思議ではありません。

The New Englnd Journal of Medicine という学術雑誌がありますが、この雑誌に掲載されると翌日から世界中で治療内容が変わる・・といわれているのですが、この雑誌の2001年にDASH(高血圧症予防食事療法:Dietary Approaches to Stop Hypertention)食が高血圧を下げるか?・・の研究があります。

結論では、 “減脂"“減糖"食であるDASH食は3種類の塩分摂取レベルにおいても血圧低下作用は認められ、高血圧がある人もない人も血圧は低下した・・

塩分摂取レベルが同じであるコントロール食(平均的な米国人の食)に比べて、“減脂"“減糖"食であるDASH食は1ヶ月間でも血圧は低下することを示しています。

表は、動脈硬化(T-max)の程度別に高血圧の有無がイベントにどれほど関与しているのかを調べたものです。

ご覧のように、イベントの発生率はT-maxと非常に良く相関し、同じ動脈硬化レベルでは、高血圧の有無は、イベント発生にほとんど関与していないことが判ります。

このことからも、高血圧を治療しても脳梗塞の発生を抑えることは困難で、脳梗塞の再発を抑えることも同様に困難なのです。

誤解のないように述べますが、高血圧を治療することが無意味ということではありません。高血圧性の脳出血は予防しなければなりません。

2006年アメリカ心臓協会は心筋梗塞などの予防のための食事と生活習慣を勧めています。それは、劣化コレステロール(参照5)などの脂質や糖分の摂取を制限するように勧めており、私のプラークを低下・改善させる食事療法(参照6)と類似しています。

米国では最近、心筋梗塞による死者が昔より半減したそうですが、このような予防に関する研究が進んでいる御陰でしょう・・。

日本でも塩分(参照7)や、運動(参照8)や、タバコ(参照9)などの古典的生活習慣指導と決別し、米国の研究を見習った生活習慣の指導を普段の医療現場から発信していただきたいものです。

古典的生活習慣指導が有効ではないといえる科学的根拠は、動脈硬化の定量評価ができるT-max測定の開発で初めてなし得ることなのです。

動脈硬化の進行が、血管エコーを駆使することによって生体解剖レベル程度の明確な定量評価が当院では既に可能になっています。(参照10

脳梗塞の再発や冠動脈の狭窄などの再発を心配されている方は、脳血管のMRI検査(参照11)や頸動脈エコー(参照12)で決して安心してはいけません。

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