脳梗塞・心筋梗塞の予防法

糖尿病でA1c値を下げても脳梗塞・心筋梗塞のリスクは低下しない

糖尿病の方で、一番心配なのは近い将来・・腎不全・脳梗塞・心筋梗塞などの合併症で自由を制限される・倒れること!(参照1)・・ではないしょうか。

今の病院外来での説明や教育入院の講習では、それらの合併症から遠ざかるかどうかの目安として、盛んにA1c値の上昇〜低下が用いられていますが・・・A1c値が下がっても決して油断してはいけません!

表は当院のデータですが、60歳以上の薬物治療を受けておられる糖尿病の患者さんを調べました。

対象者の多くは糖尿病治療歴が数年間あるいは脳・心血管イベント後に数年を経過した方々で、頸動脈を含む8カ所の血管エコーを行った時点に直近のA1c値、T-max値(参照2)、(参照3)、イベント既往率、リスクレベルです。

表でお判りのように、A1c値が5.8以下でも動脈硬化の総合指数であるT-maxの平均が10.3mmもあり、A1c値が7.0以上でもT-maxの平均は9.9mmなのですから、A1c値が低下しても脳梗塞・心筋梗塞の危険回避が出来ていない証拠が読み取れます。(注釈: A1c値が低下してもプラークが低下したことにはならない)

頸動脈エコー(超音波検査)などの血管エコーがない時代にはA1c値やTG値(中性脂肪値)の低下を目標にしても良いでしょうが、現在のように血管内部の汚れを簡単にビジュアル化して見ることが出来る時代(参照4)、(参照5)にはA1c値よりも血管プラークの改善を拠り所にすべきです。

A1c値は確かに糖尿病ではない人達にとっては動脈硬化(脳梗塞・心筋梗塞など)の危険因子ですが(参照6)、それは血糖が持続して高い状況を作り出してきた長年の食習慣と関係があるからです。

A1c値の上昇は長年の食習慣の“単なる一つの結果”である訳ですから、“単なる一つの結果”であるA1c値上昇を糖尿病の薬などで低下(補正)させても,糖尿病の薬が血管のプラークを掃除するわけではないのですから、食習慣をガラリと変えない限り“血管内の脂汚れ”は改善(参照7)致しません。

ただし、劣化コレステロールの少ない食事にした食事療法(参照8)で非空腹時のTG値と共にA1c値が低下したならば、ある程度の効果は期待できます。

糖尿病の方はA1c値を下げることは治療の目標に違いありませんが、長い目で見れば血管プラークを低下させる事こそが優先順位の第一位とお考え下さい。

しかし、
残念ながら・・血管エコーという現代の最先端技術がまだ普及していません・・

糖尿病の方に限らず、頸動脈エコーを含む8カ所の血管エコーが普通に受けられ、血管プラークを低下させる・・そんな時代に早くなって欲しいと願っています。
参照9

「脳梗塞・心筋梗塞の予防法」目次へ戻る

Dr.真島康雄のバラの診察室

携帯版のご案内

お知らせ

リンクページ