脳梗塞・心筋梗塞の予防法

乳製品のヨーグルトは動脈硬化(プラーク)を進行させる可能性あり。頻回の多食は危険。

私の“食品とプラークの関係”の実地研究において、当初から乳製品のヨーグルトを毎日食べている人のプラークの改善が悪く、ヨーグルトを摂取しているのでプラークが悪化しているのでは?・・との疑問の症例も多々ありました。
(2019年2月1日追記:乳製品の普通のヨーグルトを毎日食べている方のプラーク改善不良・悪化の原因が判明しました。その原因はヨーグルト内の脂質でした。乳製品だからではありません。米国でも動脈硬化を進行させるひとつに乳製品がリストアップされますが、動脈硬化を進行させたのは乳製品だからではなく、乳製品に多く含まれる脂質が問題だったのです。疫学調査ではこのような事実解明は不可能でしょう。)

また、そんな中で、2013年6月に・・76歳の男性で・・子供の時から牛乳を毎日400cc現在も飲み続けている方が受診されました。8ヶ所の血管エコーでは“腹部大動脈瘤”を認め、血管プラークは腹部大動脈-max=4.6mm 大腿動脈-max=2.1mm 腸骨動脈-max=4.6mm 頸動脈-max=3.0mm 右鎖骨下動脈-max=2.7mm 脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4 T-max=12.4mm と、かなり激しく全身の動脈硬化が進行した状態でした。

しかし、
食習慣点数=192点あるものの、それ程の高得点ではなく、アルコール歴も1日に日本酒2合程度、食の好み調査でも、野菜は好きで、魚は大好き、肉も甘い物も 普通の食の好みでした。・・別に、この年齢にしては、特別に悪い食習慣でもないのに・・・私の経験から・・・この動脈硬化の程度は普通ではないな〜と・・。・・プラスアルファの何かがある・・・。(2019年2月1日追記:プラスアルファが判明しました。毎日の牛乳の脂質の量が多すぎて、プラーク形成が粛々と進行したものと断定できます。なお、“魚が大好き”もプラーク肥厚、つまり動脈硬化進行にプラスに作用します。)

この時から、牛乳は“液体の肉”だから多飲は危険かも?・・・・との思いを持ち続けていました。

そんな中、2016年の3月に・・・

3年前〜乳製品のヨーグルトを毎日400cc も多飲していた若い方が、頸動脈プラークを指摘されて受診されました。 結果は下図のごとく頸動脈には驚くほどのプラークが存在していました。


(備考:IMT=血管壁の内膜・中膜の肥厚=「プラークの厚さ」の事で単位はmmで表現)

症例の詳細:48歳の男性

BMI=17.9 食習慣点数=32点! 食の好み:甘い物は好きではない、肉は普通、野菜は大好き、魚は好き、揚げ物は普通・・アルコールもほとんど飲まず(付き合いでごく少量)、喫煙歴(-)、牛乳摂取(-)、バター摂取(-)。なお、高血圧(-)、糖尿病(-)です。

2007年から、ある病気をきっかけに・・卵1日1個と野菜中心の食生活。主食は白米を混ぜた玄米食で、魚はウルメイワシ2〜3匹程度。肉はほとんど食べず、いわゆる菜食主義的な食習慣。

しかし、3年前〜ヨーグルトを400cc食べる習慣を追加しました。

一見すると、健康に良さそうな食習慣ですが・・
8カ所の血管エコーでのプラークは、腹部大動脈(A-max)=2.06mm大腿動脈(F-max)=0.72mm
頸動脈-max=4.69mm(左=4.69mm, 右=1.91mm) 右鎖骨下動脈(S-max)=1.12mmでした。たまたまですが、頸動脈に激しくプラークが存在していたのです。

プラークの解説:2015年12月(3ヶ月前)にA病院にて左頸動脈にプラーク:2.0mm(右頸動脈には1.9mm)を指摘されています。2016年3月の当院初診時に、A病院で測定された左頸動脈プラークの同部を測定したら2.20mmでしたので、やはりプラークは現在も進行中であると言えます(上図)。

また、当院受診時には左頸動脈の外側壁に4.69mmもプラークが存在し、パワーフローというカラー表示でなければ見落としやすい均一で軟らかい脂肪成分が、急速に堆積中であると推察される所見を認めました(上図)。 この4.69mmのプラークは2015年12月にも存在していたと考えられます。(備考:動脈エコー検査は、装置と技術と経験に大きく左右される検査です)

採血検査:2015年12月 TC=210 LDL=112 TG=37 HDL=84  L/H比=1.33
LDLが比較的低くても、L/H比が<1.5 でも、プラークは激しく堆積しています・・・
L/H比を個別のケースで動脈硬化予測の目安にするのは危険すぎます。

その他の検査:2015年12月の頭部のMRIでは特に異常なし。・・・でも・・脳・脳血管のMRI検査は頸動脈プラークの状況の把握にはあまり役に立ちません。最低でも、頸動脈エコーを受けましょう。

自覚症状:2016年1月頃から、安静時に胸から背中への違和感、朝のふらつき、頭痛、肩こり、こむら返り、いびき、寝汗・・・などの動脈硬化(プラーク堆積)によると思われる症状が出現していますが、これらの症状の発現も・・プラーク肥厚が現在も進行中である・・というサインとなります。

考察:48歳で頸動脈に4mm以上のプラーク! 普通に考えれば肉の多食が最も考えられます。
この方の場合は、3年前から脂肪分3.8%の牛乳製ヨーグルトの400cc を・・毎日摂取していました・・・ ということは、400cc中の(脂質量)脂肪分は15.2g(脂質成分=15.2g:納豆換算で約3個分)となります。つまり・・2日で15.2×2=30.4gの牛の液体脂肪を食べていることになります。

一方で、輸入肩ロースステーキ100g中の脂質量は17.4gですので、400ccのヨーグルト2日分の脂肪分30.4gを含むロースステーキは175gとなります。

日本では普通サイズのステーキは約150gですから、この方は・・肉を食べていないつもりでも・・やや大きめの輸入肩ロースステーキを・・3年間も・・1日置きに・・食べ続けていたことになります。

以上の結果から、「この症例の頸動脈プラーク肥厚の原因は・・・牛乳由来のヨーグルトの多飲である可能性が極めて高い」・・・と言わざるを得ません。

コメント: この方に関しては、今後、抗血小板剤&RAP食でのプラークの変化を見守りたいと思います。

関連情報:
牛乳摂取とプラークの程度(T-max:8カ所の血管汚れの総和)との関係を調べました。

60歳以上の2629人中、牛乳を成人になってから3年間以上、毎日180cc飲んだ食習慣がある人575人(平均年齢68.9±5.9歳)のT-maxは8.96mm±3.20mm、牛乳を飲む習慣がなかった551人(平均年齢68.6±5.2歳)のT-maxは8.65mm±3.09mm であり、統計学的に2群間に有意な相違は認めませんでした。

つまり・・普通の牛乳やヨーグルトの180ccを3年間以上飲んでも食べても・・・それだけでは心配は無用です。

『注意:無脂肪の牛乳や、無脂肪のヨーグルトを毎日180cc程度飲んだり、食べたりすると・・3ヶ月〜半年で・・急速にプラークが悪化する場合があるのでご注意を(動脈硬化の未来塾 122)、RAP食でのヨーグルト摂取は・・くれぐれも(血管エコー実例・研究 29)の最新記事をお読みください。・・・2021年8月23日追記』

<備考>

2017年12月〜2019年1月にかけて、植物性の脂質(全ての植物油・全ての大豆食品・アボガドなど)でも過剰になれば、動物性の脂質と同じく血管プラークの原因物質になることが明白に(動脈硬化の未来塾 54))、そして確実になりました(血管エコーの実例 29))

この記事の冒頭の76歳の男性の症例に関する考察として、子供の頃から30歳頃までは牛乳を毎日400ccでもプラークは溜まらないでしょうが、50歳になってもこの習慣を続けると、牛乳400cc中に脂質が約16.8g・・・これは納豆約4個分の脂質に相当します。動物性の脂質を含む牛乳だから動脈硬化(プラーク形成)が生じたのではありません。おそらく、子供の時から1日4個の納豆を毎日食べ続ければ、牛乳400ccと同じ動脈硬化の状態になったでしょう(動脈硬化の未来塾 87)) (動脈硬化の未来塾 88))。」

あらゆる、植物性食品であっても週に何度も食するような食品は、その脂質量を注意すべきです。

美味しい嗜好品(カカオ高含有チョコなど)に関しても、少量の砂糖は問題ではありません。脂質成分が最も重要です。嗜好品や健康のための食べ物は生きるための食べ物ではありませんから、脂質成分は可能な限り低いのがいいでしょう。

(例外:脂肪0の乳製品は、ヨーグルト・牛乳・脱脂粉乳・ホエイプロテインなど・・プラーク悪化を疑う症例も存在し、全て注意を要します:(動脈硬化の未来塾 122)2021年8月23日追記)

結論:脂質成分が多い乳製品の頻回の多食は危険な場合がある。
   ただし、無脂肪(脂肪0)表示の乳製品の頻回の多食も危険な場合がある

2016年7月11日 記載
2019年2月1日追加・修正記載
2020年5月20日 記事修正
                            2021年8月23日 記事修正

真島消化器クリニック
真島康雄

 

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