脳梗塞・心筋梗塞の予防法

鯖など、青魚の毎日食で動脈硬化(プラーク)が進行し、最新RAP食で改善した1例

初期のRAP食(旧式RAP食:2008〜2015年2月頃)では「ノンオイル・ノンシュガー・動物性の脂肪を制限」が基本でした。特に酸化・劣化脂質(加熱された油や脂)にこだわっていましたが、これは誤りでした

旧式RAP食では、青魚に限らず魚を推奨し、昔から健康にいいとされている様々な大豆食品(豆腐、豆乳、炒り豆、枝豆、きな粉、煮豆)、発酵した大豆食品である納豆、および魚の鯖缶やサンマの缶詰なども推奨していました。

しかし上記の食品のいずれも、血管エコーという科学の目で観察し続けた結果、その多食はプラークの悪化を招くという“驚愕の事実”を2015年3月〜2018年3月にかけて、順次確認し、その度にホームページ上で注意を喚起してきました(血管エコーの実例・研究を 29))。

それらの驚愕の事実呈示は、オリーブ油・エゴマ油(動脈硬化の未来塾 54))、青魚(動脈硬化の未来塾 53))や、納豆・大豆食品(血管エコーの実例・研究を 29))などで行っています。

(頸動脈プラークなどのプラークに関する総合的な解説は→(動脈硬化の未来塾 31)) )

脂質摂取が、ある一定以上を超えて過剰な域に達すれば、発酵した食品であっても、劣化・酸化していない食品(生の食品など)であっても、生の植物性の脂質であっても、「動物性の脂・加熱された植物油」と同様にプラークは普通に堆積します

これらの食品を・・ 医や食の“専門家”が推奨し・・その一言が・・聞き手を毎日食・多食・過食へ導き・・健康寿命を縮めているとしたら・・栄養士、看護師、Drなどの医療関係者の責任は極めて重大です。

私も2015年2月頃までは青魚を推奨していました。その後順次注意を促し、2016年2月1日には、魚は外見(白身、青魚、赤身)に関わらず、脂質(100当たり**g)の少ない魚・部位を選択すべきであることを確認し、ホームページに記載し、2016年3月28日には<青魚の魚油は健康にいい」は迷信です>と、再度掲載しています。

ヒトに関して、プラーク増減と食品との関係を研究している研究機関は見あたらず、そういう教育カリキュラムは大学の医学部でも、栄養学科でも存在しないでしょう

以下に、私の反省も込めて症例を呈示します。

<症例報告>
「この研究に関して、著者が開示すべき利益相反関係にある企業などはありません」

52歳男性

<家族歴>

  • 母:60歳頃 心筋梗塞でバイパス手術受け79歳健在

<喫煙歴>

  • 44歳まで毎日30本 現在はタバコ(-)

<現病歴>

  • 1999年頃  38歳頃---胸の圧迫感&不整脈がほぼ毎日
  • 2001年頃    こめかみの奥の頭痛が月に1回位生じていた
  • 2003年頃    41歳頃---高血圧の指摘受け、降圧剤を飲んだり飲まなかったり。
             頭部MRI=異常なし
  • 2012年1月 51歳------胸焼け&冷や汗 30分様子みるが治まらず、救急搬送。
              「心筋梗塞」の診断でステント挿入
  • 2013年8月 当院受診

<初診時所見>

  • 体重84Kg  BMI=27.7 高血圧(+) 糖尿病(-)
  • LDL=91 TG=88 HDL=52  L/H比=1.75  Cr=1.02

<初診時の血管エコー所見>

  • 左大腿動脈(縦断)max-IMT=2.6 mm----(F-max)
  • 右大腿動脈max-IMT=1.3 mm
  • 右頸動脈分岐部max-IMT=0.6 mm
  • 左頸動脈分岐部max-IMT=0.7 mm
  • 右総頸動脈max-IMT=0.6 mm
  • 左総頸動脈max-IMT=1.1 mm----(C-max)
  • 右鎖骨下動脈max-IMT=1.5 mm----(S-max)
  • 腹部大動脈max-IMT=3.8 mm----(A-max)
    脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)

<受診後の経過>

  • 2013年 8月 当院初診・・・LDL=91 TG=88 HDL=52  L/H比=1.75  Cr=1.02
           左大腿動脈(縦断)max-IMT=2.6 mm(写真呈示)
    バイアスピリン(100)1,1x朝後-服用中 降圧剤2種類服用中
    ビタバスタチンカルシウム(1)1T服用中(スタチン剤)
    食事指導(旧式RAP食)
    (揚げ物・油炒め・ブタ脂や牛肉の霜降り肉を制限、甘い物の過食を制限、魚は推奨
  • 2014年9月 左大腿動脈(縦断)max-IMT=2.56 mm
    LDL=72 TG=90 HDL=46  L/H比=1.57 Cr=1.12
    血圧低下にて降圧剤減量中
  • 2015年4月 左大腿動脈(縦断)max-IMT=2.66 mm(写真呈示)
    プラーク改善不良にて、様々な健康情報を基に自分の考えで、当院の推奨もあり、毎日・・魚料理にして、週の多くの日で朝、昼、晩も青魚のサバ(鯖)料理にした(後日判明)。 
    LDL=91 TG=210 HDL=33  L/H比=2.76 Cr=1.15
  • 2016年1月 左大腿動脈(縦断)max-IMT=3.01 mm(写真呈示)急に悪化
    右大腿動脈max-IMT=1.28 mm
    右鎖骨下動脈max-IMT=1.62 mm  (注:左大腿動脈のプラーク以外は著変なし)

    この日の診察では、プラーク悪化の原因としてアルコールを考え、アルコールを減らすように指導。さらにビタバスタチンカルシウム(1)1T(スタチン剤)の中止を推奨

    LDL=118 TG=173 HDL=40  L/H比=1.57  Cr=1.15
    (当時、青魚を上記のごとく多食していたという事実を確認していなかった。)
    その後、当院への通院は中断し・・時々閲覧していた当院のホームページで青魚の多食が危険であることを知り(2016年3月頃)、脂の乗った魚を控えるようにした。 月日が流れて2年3ヶ月後の2018年4月に再受診となる。
  • 2018年4月 左大腿動脈(縦断)max-IMT =2.29 mm(写真呈示)改善
    右大腿動脈max-IMT=1.23 mm 
    右鎖骨下動脈max-IMT=1.46 mm
    LDL=143 TG=275 HDL=46  L/H比=3.11 Cr=1.09

<大豆食品・魚の食習慣>

プラークが明らかに退縮中。納豆の毎日摂取はなく、納豆はほとんど食べていない。
豆乳ヨーグルトは110ccを週に3回食べている。
豆腐は週に半丁程度。
トコロテンは食べていない。
青魚に限らず、脂の乗った魚は注意している。「最新RAP食に沿った食習慣


<結果>

  1. サバなどを朝昼晩も食べるなどして、青魚の過食の結果、2015年4月からの9ヶ月で大腿動脈のプラークが2.66→3.01mmへ急速に悪化した(図)
  2. 青魚など、特に鯖(サバ缶、塩サバ、地物サバ)などの脂の乗った魚を控えて・・・2年3ヶ月で、大腿動脈のプラークが3.01→2.29mmへ改善した(図)
  3. スタチン剤服用を中止して、LDLは上昇したが、プラークは非常に良好に退縮した(図)
  4. 青魚などの多食にもかかわらず、8ヶ所の血管エコー観察部位の内、左大腿動脈1ヶ所のみのプラークが急速に肥厚した
  5. プラークの肥厚に伴ってCr(腎障害の程度)が次第に上昇したが、プラーク退縮と共にCrが低下した(図)。

<考察>

  • 魚の過食、特にサバなどの青魚の多食でプラークが堆積し(動脈硬化の未来塾 45)) (動脈硬化の未来塾 53))、それらを控えるとプラークが改善することはすでに掲載済みです(動脈硬化の未来塾 53)) (動脈硬化の未来塾 84))
  • 塩サバ、その他の脂の乗った魚の多食の場合、大腿動脈にプラークが溜まりやすい傾向にあります(原因不明)。したがって、脂の乗った鯖缶・塩サバなどの頻回摂取の情報が得られたら、必ず大腿動脈のプラークまで確認する必要があります。また、大腿動脈には大豆食品の多食でもプラークが溜まりやすい傾向にあります
  • 現在の流行として鯖缶が盛んに推奨されていますが、鯖缶を度々食べておられる方々はくれぐれも、頸動脈や大腿動脈・右鎖骨下動脈エコーなどの検査をお受けください
  • プラークが堆積すると、初期症状としては“朝のふらつき”“こむら返り”“肩こり”“高血圧”“不整脈”“狭心症(胸の圧迫感など)”などが(動脈硬化の未来塾 58))(動脈硬化の未来塾 40))(動脈硬化の未来塾 61))・・・数年以上経過して脳梗塞・心筋梗塞・認知症などへレベルアップして、あなたに襲いかかるでしょう(動脈硬化の未来塾 7))
    (本例は、38歳:胸の圧迫感・不整脈→42歳:高血圧→51歳:心筋梗塞)

    (備考:私の血管に関する医学情報は、科学の目である血管エコーを通して、直接動脈の中のプラークを観察することによって得られていますので、偵察衛星で高速道路(動脈)の混み具合を見ている立場の人と全く同じで、・・動脈硬化に関する予言みたいな予測は、外れることはあまり考えられません。・・・・健康情報で、「何を信じていいかわからん」状態の方への助言です。 食品と血管プラークとの視覚的なデータを信じないで、何が信じられるというのでしょうか? スタチン剤と血管プラークの視覚的データも同様です。過去の統計に基づく医学データ(食品摂取と健康に関する疫学調査)はあくまで参考データに過ぎません。)
  • スタチン剤の中止もプラーク改善にとってプラスに作用したと考えられます
    (動脈硬化の未来塾 52) 動脈硬化の未来塾 68) 動脈硬化の未来塾 69)
    (動脈硬化の未来塾 75) LDLは143へ上昇、L/H=3.11へ上昇・・・でも、プラークは改善。

本例は、先発品のスタチン剤を1年間も服用していましたが動脈硬化はかなり進行した状態でした。スタチン剤をoffにし、進化したRAP食を続ければ、再入院しての命がけの治療であるステント挿入や脳梗塞を併発するなどのリスクは激減し、本人の医療コストや不幸になる確率がかなり減少するでしょう。

動脈硬化改善を意図して“プラークを退縮させる事ができる”という医療には、そういうことを“希望”ではなく、“普通”にする力が備わっていることになります。

一刻も早くLDL・血圧・体重などではなく“血管プラーク”で健康を論じる時代にならなければならないのですが・・・。

  • 腎機能:Crがプラークの進行と共に悪化し、プラークの退縮によってCrが改善しています。このように、プラーク改善に伴って腎機能:Cr(クレアチニン)が改善する症例はまれではありません。
    (動脈硬化の未来塾 34)
  • 上記の経過で示したごとく、「青魚の多食では、左大腿動脈のプラークのみ急速に肥厚したが、他の部位のプラークには大きな変動はなかった。」つまり、食品とプラークとの関係を探る研究を行う場合は、少なくとも8カ所以上の血管を観察する必要があると思われる。また、食品の違いで「頸動脈プラークは改善したが、大腿動脈のプラークは悪化した」「右の頸動脈分岐部はプラークが改善したが、左の総頸動脈のプラークは悪化した」などの事例も経験され、プラークが本当に改善しているかどうかの判定を下すためには、複数ヶ所のプラークの観察が望ましい

備考:あるダイエット法で、頸動脈プラークが改善しても、身体各所のプラークを観察しなければ、本当に安心していいのかどうか判りません。

<まとめ>

  • 本例は、旧式のRAP食で原因不明のプラーク悪化を来たし、その原因がサバなどの青魚の多食である事が判明した。また青魚の多食や大豆製品の多食を制限した最新RAP食によりプラークは明らかに退縮した

備考:

  • 旧式RAP食とは・・「魚の脂」「大豆製品・納豆・豆乳・豆乳ヨーグルトの脂」はプラークを肥厚させないという考え      植物油・動物(ブタ、ウシなど)脂は制限
  • 最新RAP食とは・・「魚の脂や油」「大豆製品・納豆・豆乳・豆乳ヨーグルトの脂」「植物性油」「動物性脂」共に過食や多食はプラークを肥厚させる。それらの食品が発酵していても、酸化・劣化していなくても同じ
  • 2018年4月には最新RAP食の概念を盛り込んだ「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」(幻冬舎)を出版。書籍にはRAP食による食事療法を詳しく、具体的に解説

<コラム>

ある老人ホームで入所中の方が頂く毎日の給食に関しての実話です。

「ある患者さんで、老人ホームの職員ですが、通常は昼だけ1食の検食(味見、毒味みたいな事)業務をする立場の人ですが、2カ月半だけ毎日2食の検食にしたら、プラークが急速に悪化しました。(この老人ホームの食事は、おかずに揚げ物が多いのだそうです)

既存の栄養学における、栄養士が考えた栄養バランスだけでは健康は守れないという実例です。

(ホームの献立が入居者の健康を左右するでしょう・・学校給食の献立がもっと心配です

揚げ物だけが特別に悪いのではありません。揚げ物は油を多く吸い込んでいます。サバや塩サバにも油が多く含まれています・・魚の脂は「油ではない」!?・・などと思わないで下さい。火であぶれば、魚から「液体の油」がしたたり落ちます。植物性の油も脂も、動物性の油も脂も・・・プラーク増減の観点からは・・食べて消化した時点から・・同じ容量の脂(油)となり・・プラークの増減に関しては、ほとんど 同じ影響が出ます

老人ホームで、脂の乗った鯖やサンマなどの青魚を頻繁に料理として提供すれば、揚げ物を頻繁に料理として提供するのと同じで、プラークが進行するでしょう。

なお、最近ブームになっている鯖缶を頻繁に食べるのは賢明ではありません(実例有り)

RAP食に適合した魚の缶詰なら、オイル漬けではない「ツナ缶」「シーチキン」(100g当たりの脂質が1g程度の品)をお勧めします。



2018年8月29日 記載
真島消化器クリニック

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