脳梗塞・心筋梗塞の予防法

アボガドの頻回摂取で動脈硬化(プラーク)が進行したと思われる1例

「アボガドに含まれる不飽和脂肪酸の一つであるオレイン酸が悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにする善玉コレステロールを増やしてくれます・・」

などの“ウンチク”は、受け売りの受け売りでしょうか?・・直接血管の中の状況を手に取るように観察できる現代医学の前には・・・・「脳・心血管の動脈硬化を進行させる・危険な誤った講釈」に聞こえて仕方ありません。

脳の認知能力低下が原因で起こる・・痛ましい交通事故を聞くたびに・・運転者のプラークが急速に進行してはいないか?・・怖くて・心配でなりません。

高脂質である食品にも関わらず、過去の医学で健康に良いとされている植物性の食材のうち、日本人に馴染みが薄かった“アボガド”だけ・・その習慣的な摂取によるプラークへの影響を・・実例の画像で確認できていませんでした。

今回、“アボガド”の影響がM-lineの仮説((血管エコー実例・研究を・・・29)の2019年3月掲載記事)を裏付けるかのように、実例で経験できましたので報告いたします。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」


図1(下図)


<症例:プラーク治療の経過および結果>
症例1. 67歳 女性。
病歴:
2008年8月中旬 初診 血管エコー
右頸動脈分岐部max-IMT=1.5mm 左頸動脈分岐部max-IMT=0.9mm
右総頸動脈max-IMT=0.7mm 左総頸動脈max-IMT=0.8mm
右鎖骨窩動脈max-IMT=1.4mm
採血結果:LDL=132 TG=132 HDL=58
2008年12月上旬 (8カ所の血管エコーによる測定を開始していた)
右大腿動脈max-IMT=1.6mm 左大腿動脈max-IMT=2.2mm
腹部大動脈max-IMT=1.0mm
(当時の食事:ノンオイル、ノンシュガーで、肉の脂身、霜降り肉控える程度)

2009年4月下旬 左大腿動脈max-IMT=2.2mm プラーク改善せず。
        (右頸動脈分岐部max-IMT=1.5mm)
LDL=149 TG=120 HDL=** 当時は、プラーが改善しないのはLDL高値が原因と考えて、クレストール(2.5)1T開始(4ヶ月服用)
2009年8月下旬 左頸部のリンパ節痛にてクレストール中止。
2009年9月上旬 左大腿動脈max-IMT=2.2mm プラーク改善なし
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.5mm)
2011年3月上旬 左大腿動脈max-IMT=2.0mm プラーク改善傾向
         (右頸動脈分岐部max-IMT=****)
2012年10月下旬 左大腿動脈max-IMT=1.6mm プラーク改善
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.4mm)
2014年5月上旬 左大腿動脈max-IMT=1.49mm プラーク改善
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.33mm)
2015年5月下旬 左大腿動脈max-IMT=1.53mm プラーク悪化傾向
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.44mm)(送別会多かった)
2016年5月中旬 左大腿動脈max-IMT=1.45mm プラーク改善傾向
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.50mm)
2017年5月下旬 左大腿動脈max-IMT=1.39mm プラーク改善
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.39mm)
2017年11月下旬 左大腿動脈max-IMT=2.36mm プラーク悪化
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.63mm)
(青魚大好きで、健康のためにと・・努めて・・“サバ”を多く食べていた。天ぷらも多かった。→当時のRAP食(高脂質の魚を禁止)を指導
2018年6月上旬 左大腿動脈max-IMT=1.85mm プラーク改善(上図)
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.53mm)
2018年12月上旬 左大腿動脈max-IMT=2.50mm プラーク悪化! (上図)
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.58mm)
(2018年6月からアボガド半個を週に2回、サラダにして食べていた。アボガドのみ中止し、本人の同意を得て、他の食習慣は全て同じで経過観察)
2019年4月中旬 左大腿動脈max-IMT=2.23mm プラーク改善! (上図)
         (右頸動脈分岐部max-IMT=1.23mm)


図2(下図)
右頸動脈分岐部のプラーク肥厚の経過を図で示します。


<考察>
1.経過より、2018年12月時点でのプラーク肥厚は、“アボガド”の生食によるものと考えられますが、本例は食習慣によりプラークの増減を過去に認めている経緯があり、1日の脂質摂取量としては常にM-lineのボーダーライン上あるいはそれ以上であったと考えられ、今回のように、少量の脂質摂取でもプラークが堆積するような状況であったと考えられます

2.食品によるプラークの堆積に関しては、“脂質の酸化の有無“や、”脂質が植物由来か?動物由来か?“といった事は、プラークの肥厚に関する限り、ほとんど関係ないということを・・物語る事例でもあります。

3.現代の多くのDrが推奨しておられる食品も、摂取過剰になれば、極めて危険です。 なぜなら・・オリーブオイル(動脈硬化の未来塾 54)や、納豆・豆乳ヨーグルトを含む大豆食品(動脈硬化の未来塾 87)、無脂肪ではない乳製品のヨーグルト(動脈硬化の未来塾 55)、サバ缶や青魚(動脈硬化の未来塾 86) (動脈硬化の未来塾 94)、チョコレート(動脈硬化の未来塾 88)でも頻回摂取・多量摂取にて脂質を過剰に摂取することになり、プラーク(動脈硬化)が悪化しますので、くれぐれも注意が必要です。

4.アボガド1個の可食部分は約140gで、その脂質量は26g程度です。この方は、アボガド半個を週に2回ですから週に1個です。 日割りでの脂質摂取は3.71gとなり、脂質摂取量から計算すれば、1パック45gの納豆の0.8個分を毎日食べていた計算になります。M-lineをオーバーした食習慣の人が、納豆を毎日1個食べるとプラークが堆積する場合が多いという多くの経験の結果から、本例の2018年6月からの半年で、プラークが急速に肥厚した原因の一つはアボガドの習慣的な摂取と考えられます。 しかも、アボガド中止だけの食習慣でプラークが明らかに退縮しました。

5.仮に、この方がアボガドを習慣的に食べる前に、プラークがほとんどないと仮定すると、日頃からM-lineを下回った食習慣と考えられ、週に1個程度のアボガド摂取なら、プラーク堆積に影響することは少ないだろうと考えられます。

6.今から10年以上も前、「頸動脈や右鎖骨窩動脈の血管エコーだけでは、動脈硬化の状態を正しく判定できない場合がある」と気付いていましたが、そんな症例の1例でもあります。(臨床経過の記述を参照)

7.臨床経過から、LDLが高くても・・動脈硬化(プラーク)改善目的でのスタチン剤は全く必要ではありませんでした(動脈硬化の未来塾 68)。むしろ使用しないほうがプラーク改善できると思われます(動脈硬化の未来塾 52)。LDLが200以上と高くてもスタチン剤なしでプラークは改善します(動脈硬化の未来塾 75)

<結語>
1)すでに血管プラークを指摘されている人が、アボガドを週に1個以上、習慣的に食べ続けるとプラークが肥厚する可能性がある。
2)ただし、頸動脈にプラークを認めなくとも、他の部位にプラークを認める場合も多く、注意が必要です。

備考:M-lineとは、主にマクロファージ(Macrophage)のプラーク貪食能力のおかげで、プラーク堆積が進行しないと考えられる1日における脂質摂取量の最大値。プラークと食品摂取から得られた科学的な測定に基づくエビデンスから導き出されたM-line 仮説 はRAP食の根幹となっていますが、その詳細は(血管エコー実例・研究を・・・29)の2019年3月の記事を参照。

2019年5月29日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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