脳梗塞・心筋梗塞の予防法

30才以降に出現する閃輝暗点は脳梗塞・プラーク病の前兆かもしれません

急に目の前に“ギラギラ”“ギザギザした光の輝き”が出現したら、閃輝暗点(せんきあんてん)かもしれません。この症状や発生機序は眼科のホームページなどに詳細に記載されていますので割愛しますが、この症状は脳梗塞や心筋梗塞の予防のチャンスを与えてくれているのかもしれません。

閃輝暗点が動脈硬化によって生じている場会、今までは閃輝暗点の出現を完全に無くすことは不可能なことです。私は学生時代の講義で、閃輝暗点の講義を受けた記憶がありません・・サボっていたのでしょうか?
おそらく、最近の高脂質食によって・・増加している病気・病態なのでしょう

当院では、病歴を詳細に記録していますが、“プラークを見れば済むから・・・”と、この“閃輝暗点”症状を重要視してきませんでした。

でも、最近56才の男性が、“閃輝暗点”を主訴に脳外科を受診したら、脳底動脈狭窄を指摘されたからと・・血管エコーご希望で受診されました(表4 Case39)。

“閃輝暗点”は、最近では非常に重要な臨床上の症状(脳梗塞の前兆である場合がある)かと思われます。

そこで、RAP食(血管エコー実例・研究 29))によるプラーク退縮に伴って、閃輝暗点症状が完全に出現しなくなった1症例を経験しましたので症例提示します。
また、自験例39例における血管プラークの程度(動脈硬化の進行具合)を追加で検討しました。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

症例1. 57歳 女性  (表1 Case 10)

<主訴>閃輝暗点・肩こり

<家族歴>母:56才でくも膜下出血、74才 くも膜下出血で他界

<現病歴>2011年1月頃より・・・“閃輝暗点が時々出現”で眼科へ受診。「治療法なし」との説明あり。様子観察になる。この時以降、当院初診時まで同様の症状が継続。

2016年3月 LDL 130 TG 43 HDL 83
2016年7月 当院初診
TC=220 LDL=126 TG=72 HDL=82 Cr=0.71
腹部大動脈IMT=2.13mm(A-max)
右鎖骨下動脈IMT(横断)=1.92mm(S-max)
右鎖骨下動脈IMT(縦断)=1.90mm(図1)
右頸動脈分岐部IMT=1.57mm 左頸動脈分岐部IMT=1.70mm
右総頸動脈IMT=0.52mm 左総頸動脈IMT=1.77mm (図1)
左総頸動脈IMT(縦断)=1.78mm(C-max)
右大腿動脈IMT=0.51mm 左大腿動脈IMT=0.71mm (F-max)

******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2(0〜4)******

<治療>比較的な高脂血症で、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2でありながら、総頸動脈にプラークが1.78mm(縦断)1.77mm(横断)と異常に肥厚していること、便秘傾向であることから、エパデールS(900)2P,2x+ラックビー微粒N,2g,2x―を処方し、RAP食を指導しました。

<結果>

RAP食+EPA900x2P/日+ラックビー微粒N,2g,2xの3年間で

  1. 右鎖骨下動脈(縦断)=1.90mm→1.76mm(図1)
      左総頸動脈=1.77mm→1.14mm (図1)へプラーク退縮
  2. 2011年1月〜初診時の2016年7月まで、継続して時々“閃輝暗点”を自覚していたが・・・途中から閃輝暗点症状消失し、2019年も一度も出現なし。
  3. 2016年11月に血管年齢測定CAVI=右:(7.5:参考値) 左:8.9 左:40代後半に相当。  約3年後、プラークが退縮した2019年5月の血管年齢CAVI=右:8.5 左8.1  左:50代後半に相当。(血管年齢検査はプラークの増減を表現できない)(動脈硬化の未来塾 57))
  4. 2016年7月にLDL=126 TG=72 HDL=82。約3年後、プラークが退縮した2019年5月にはLDL=134 TG=81 HDL=77 でした。
    悪玉と間違って呼ばれているLDLは逆に上昇しています。(LDLは一喜一憂すべき価値なし)
  5. “肩こり”はかなり改善したものの、まだ消失していない。

<考察>

  • 閃輝暗点の原因は脳血管の収縮などで、脳血流が低下して生じる場合がある・・いわゆる心臓の「冠動脈攣縮性狭心症」に相当する「脳動脈攣縮症」と理解するのが妥当かもしれません。 名付けて「脳の狭心症」でもいいかもしれません。
  • 脳動脈がプラークで細くなり、何らかの刺激でその部の脳動脈が収縮し、閃輝暗点が生じる場合には脳梗塞のリスクが高くなります。(労作性狭心症と同じ理由)
    頸動脈エコー&脳血流MRA(脳動脈狭窄の有無を検査)が必要でしょう。
  • 閃輝暗点が出て脳外科を受診し、MRIを受けても異常は指摘されないでしょう。MRAでは脳動脈の狭窄を指摘できる場合もあるでしょう(Case 39)。でも多くは一過性黒内障(動脈硬化の未来塾 73))と同様で、TIA(一過性脳虚血性発作)による症状であり、脳梗塞前の症状と考えられます。
  • 飛蚊症を伴う場合は、必ず眼科へも受診しましょう。
  • 表1〜4の症例をご覧いただくと、頸動脈以外の大腿動脈や右鎖骨下動脈、腹部大動脈の血管エコーまで検査しなければ安心とはいえないことがお解りでしょう。人間ドックでさえ、本人が希望しないかぎり、頸動脈以外の血管までエコーしていただけません。
  • 閃輝暗点の原因が動脈硬化なら「血管プラーク病」(動脈硬化の未来塾 7))に分類可能です。 動脈硬化を治せれば(動脈硬化の未来塾 42))・・つまり・・「動脈のプラークを減らせれば、閃輝暗点は根本的に出現しなくなる」と思われますが、上記の39症例の内、閃輝暗点の症状の変化を確認したのは、症例提示したCase10とCase 34のみです。Case34では、月に1回程現れていた症状が、6ヶ月後にプラークが退縮し、閃輝暗点も全く出現しなくなりました。 おそらく、確認不足ですが・・・多くの症例で閃輝暗点症状が消失しているものと考えられます。

<結論>

  1. RAP食・EPA製剤・ビフィズス菌製剤による頸動脈プラークの退縮によって“閃輝暗点”を根本的に治せたと思われる症例を経験しました。
  2. 閃輝暗点の原因の一つとして、脳血管プラークが考えられ、臨床の現場では閃輝暗点は脳梗塞の前兆症状の一つと考えて、8カ所の血管エコーを施行すべきでしょう。

付録:
参考までに、2011年4月から2019年6月までに経験した、閃輝暗点”出現症例(30才以降に初めて閃輝暗点を経験した症例)39例の8カ所の血管エコー所見を提示します。

<結果>

  1. 30才以降に初めて出現した閃輝暗点の経験者39名中27名(69.2%赤文字)は、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=3以上(レベルは0〜4まで)でした。
  2. リスクレベル=3以上の27症例中、頸動脈maxIMTで特に危険ではないと、誤って判断される1.7mm以下は5例(18.5%:赤文字)も存在した。

<まとめ>
“閃輝暗点”を30才以降に自覚したら・・・頸動脈エコーや脳MRAを受けるべきですが・・・
・・頸動脈エコーや脳MRI(MRA)だけで安心してしまうのは問題です。

2019年7月2日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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