脳梗塞・心筋梗塞の予防法

最新のRAP食でプラークが退縮し、初期の腹部大動脈瘤が改善した1症例

現在でも動脈硬化は、予防・進展の防止(進行を食い止める)をいかにマネイジメントするかです。 動脈硬化は治せないのが常識で、今まで“動脈硬化を治す”=“プラークを減らす”という治療法はなく、脳梗塞・心筋梗塞・狭心症・認知症などは増加の一途をたどっていますし、誰にも起こりうる病気とされていますので・・とても不安がられています。

そんな不安を抱いてはいるが・・半ば諦め状態の中高年の方々に・・勇気と希望を与えられる症例発表を行っています。

今回は“プラークが減り”“石灰化も改善し”“動脈瘤の程度が改善した!”・・そんな嘘みたいな実例を提示いたします。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」


症例1. 61歳 男性  (図1 Case 1)

まずプラークが改善し、動脈瘤の外壁の突出が改善した写真をご覧ください
図1

(2018年8月〜2019年5月)

(2020年3月30日)

<2018年8月時点までの経過>
2008年12月 8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=4.0mm(後壁の石灰化) (A-max)
右鎖骨下動脈=1.6mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=1.4mm (C-max)
左頸動脈分岐部IMT=1.1mm
右総頸動脈IMT=0.7mm 左総頸動脈IMT=0.9mm
右大腿動脈IMT=1.3mm 左大腿動脈IMT=2.3mm(F-max)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)******

血管の部位 2008/8(IMT) 2008/12(IMT) 2016/2(IMT) 2017/8(IMT)
右大腿動脈 1.3 mm 1.7 mm 1.34 mm
左大腿動脈 2.3 mm 2.7 mm 1.25 mm
右頸動脈分岐部 1.4 mm 1.4 mm 1.43 mm 1.17 mm
左頸動脈分岐部 1.1 mm 0.9 mm 1.39 mm 0.92 mm

備考:2009年12月からエパデールS(900)2,2x 開始
2017年8月時点(上表)にてプラーク治療は順調と・・安心していました。

ところが・・・突然の動脈硬化進行に驚きです!

2018年8月受診・・・腹部大動脈の石灰化のフォロー目的で血管エコー。
腹部大動脈は、2008年時点に比して、プラークはさらに肥厚し、おまけに初期の腹部大動脈瘤の所見を呈していました。(図1)

<治療> 最新RAP食(血管エコー実例・研究 29))に沿って、以下の項目などを指導。

  1. この数年、青魚が健康にいいと聞いたので、脂の乗った青魚(塩鯖、地物鯖、サンマ、など)を頻回に食べていた。さらに、週に5回の弁当のおかずは毎日塩鯖だった。
    急速に動脈硬化が進行した根本的な原因は、この二つの食習慣と思われ、普段のおかずは脂ののっていない魚などに変更し、弁当のおかずは脂の少ないシャケの切り身に変更。
  2. 豆腐の1日半丁を1/4丁へ減。
  3. 脂肪ゼロ(脂質0.1g)飲むヨーグルト(乳製品)300cc(150x2)/日 開始
  4. トコロテン300g/w→150〜300g/へ
  5. ラックビー微粒N,2g,2x-開始 エパデールS(900)2,2x-継続

<結果>

  1. 図1の写真のごとく、
    大動脈前壁のプラークが縦断で5.05→3.57→2.93mmへ(横断面の側壁でもプラークが5.71から4.01mmまで)退縮し、石灰化も改善し、大動脈外壁の外方への突出レベルが軽くなった。つまり、初期の大動脈瘤が治りつつあることを確認できた。

<考察>

  1. 本例でお解りでしょうが、頸動脈エコーだけでは本当の動脈硬化の進行度を判定できません。
  2. 本例では、頸動脈プラークが改善中であったので、油断をして大動脈のエコーを何年も行なっていませんでしたが、このように、ある部分は改善しているのに、異なった部位の血管プラークが急速に肥厚する場合があり(動脈硬化の未来塾 94)) 、注意を要します。
  3. 大動脈の突出レベルが改善されたのは、プラーク減にて大動脈壁にかかっていた進展力の負荷が軽減され、動脈には弾力性があるため、動脈の元のサイズに戻る力が上回ったためだと考えられます。初期の動脈壁突出が、石灰化したプラークの改善に伴って改善した症例も(動脈硬化の未来塾 82))の症例12でご覧いただけます。
    これは、頸動脈のプラークが減ると、頸動脈外径が縮小するという実例(動脈硬化の未来塾 35))の原理と同じと考えられます。したがって、プラークが明らかに減るということは、脳動脈を含めた・・全身にあるかもしれない動脈瘤の根本的な治療にも繋がるものと考えられます。
  4. 脂質を過剰に摂取している令和の時代に、“青魚”=“健康に良いEPAやDHAを約20%含む”という単純な理由で、「頻回に食べるべき・・」という解説は・・、すでに指摘しています(動脈硬化の未来塾 94))が・・・・完全に誤りです(青魚でも動物ですから、残りの80%の脂質は動物性で牛の脂質と変わりありません。つまり・・現代では、脂質の多いサバ缶・塩鯖等は危険食材と言えます。
  5. 日本心臓財団のホームページの動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンスによれば、LDLを下げるように脂質管理することが重要です・・と、記載されていますが、スタチン剤を投与しても、現実には本例のようにプラークが目に見えて減ることはなく、むしろ逆効果です(動脈硬化の未来塾 52))ので、スタチン剤は使用していません。
    これからの時代は、薬による脂質管理よりも、RAP食などによるプラーク管理が求められる時代ではないでしょうか。
  6. 本例の2018年8月のL/H比は1.15であり、血管エコーのない健診結果なら・・褒められる数値です。現状のメタボ健診は本当に役に立っているのでしょうか?

注意!』:
最新RAP食では、「治療が必要な方」に対して・・書籍で推奨していた“納豆”、“豆乳”、“豆乳ヨーグルト”は控えるべき食材です。昔のRAP食の先入観が強くて・・現在でも食べ続けている方が多いのでご注意ください。私の書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」を、脳梗塞・心筋梗塞・認知症などの食事療法指南書としてプレゼントされる場合は、くれぐれも上記の点について、ご説明をお願いいたします。
書籍のその他の内容に関しては、大筋で問題ありません。
大豆食品の代わりに、プレーンの脂質0ヨーグルト(乳製品)が必須アイテムになりました。(どのメーカー:菌株がプラーク改善により有益なのかを観察・研究中)

・・・つぶやき・・・
最近の“がん検診”での通知誤り事例も問題ですが・・・、採血だけで・・血管プラークの存在を知ることもなく・・動脈硬化疾患に関して・・安心させてしまっていることの罪は・・罪に問われないのでしょうか。

メタボ健診を受け・・LDLが正常で・・1年以内に脳梗塞、心筋梗塞などを発症・・などの事例は・・少なくないはずですが・・何か身体に不具合があっても・・脂質の多い食べ物を頻繁に食べていても・・LDLが正常だからと・・血管エコーを受けるチャンスや・・食習慣を反省するチャンスを失っているかもしれません・・頸動脈エコーでプラークを指摘されたら・・・それを活用して・・プラーク管理に焦点を当ててアドバイスするのが・・これからの医療関係者にとっては大切でしょう。

『無知は罪なり、知は空虚なり、英知を持つもの英雄なり』(ソクラテス)・・・

今回の症例では・・誰も知らないであろう・・元気の出る“知”の一つを皆様に公開いたしました。

<2020年3月30日・・追記>
様々なヨーグルト摂取の実例からの検証で、現在はプレーンタイプの、脂肪0ブルガリア菌ヨーグルトを治療の一つのアイテムとして採用しています。ただし、用量は絶対に厳守で1日50〜70gです。

飲むヨーグルトは、血糖の上昇例が数例出現したので、現在は推奨していません。
本例は、特別に様子観察中。

本例は「脂肪0の飲むヨーグルト(脂質0.1g)」をコップで朝150cc・夕150ccの2回摂取(1日300cc)でしたが、治りが鈍化したので、朝1回150ccの摂取へ減らしていただき、2020年2月時点の腹部大動脈の縦断でのプラークは2.93→2.53mmへ、横断でのプラークは4.01→2.89mm へ、更に退縮中です。

2020年3月30日 一部修正&追加で記載
2019年7月23日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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