脳梗塞・心筋梗塞の予防法

当院での2023年1月からの新患連続11症例の詳細---その3

はじめに
プラークを計画的に治せる医療がこの世に存在するという事を、視覚を根拠として知っていただくために、動脈硬化の未来塾148)に掲載した症例の詳細を提示いたします。

今回は、症例3です。

「今回の掲載に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<症例3: RAP 食によるプラーク退縮治療の結果(4ヶ月後)>
写真1を供覧

症例2の詳細

症例66歳 女性 住居:九州地方

<主訴>:
健診で高コレステロールを指摘された

<家族歴>
父:肝臓病で他界(80歳)
母:心臓病で他界(94歳)

<現病歴>:
2010年以降 毎年、健診で高コレステローを指摘されている
2018年4月頃 当院の書籍購入・ホームページを閲覧
2022年9月下旬 LDL=176 (TG=95 HDL=51) の指摘あり

<2023年1月中旬 当院受診> 服薬既往:なし
 体重54.2Kg BMI=22.5 BP=110/72 P=64(整)
 症状:時々便秘、睡眠が不安定

<初診時の8カ所の血管エコー>
右頸動脈分岐部IMT=0.88 mm
右総頸動脈IMT=0.67 mm
左頸動脈分岐部IMT=0.98 mm---C-max
左総頸動脈IMT=0.61 mm
右鎖骨下動脈横断IMT=2.76 mm---S-max
右鎖骨下動脈縦断IMT=2.76 mm
腹部大動脈IMT= 2.41 mm---A-max
右大腿動脈IMT=0.89---F-max
左大腿動脈IMT=0.63

脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=3(0〜4)

 

<食習慣>
食習慣点数=426点 (200点以下が好ましい)
高点数の背景:
「脂質の多い菓子類、脂質の多い魚&肉類、揚げた菓子類、揚げ物なども好き」

<食の好み>
甘いもの:好き、肉類:好き、野菜:大好き、揚げ物:好き、魚:大好き

<食歴>
○タバコ:喫煙歴(―)
○酒類:飲まない
○ミックスナッツ(一握り・・週に1回)--5年以上
○パンにバター:3回/W―10年以上
○牛乳 週に3回---1回300cc 摂取----10年以上
○ヨーグルト100cc----週に2回-----10年以上
○飲むヨーグルト80cc----週に5回-----16年以上
○玄米食:(無農薬)-----現在まで5年間

サプリメント:
○青汁----時々

<治療>
○服薬を開始
・イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)2,2x---開始
・ラックビー微粒N,2g,2x---開始

○RAP食指導(揚げ物全般の禁止、脂質の多い肉や魚の禁止、他)

<治療結果>
○プラークの変化
・右鎖骨下動脈IMT=2.76→2.11 mm(4ヶ月でのプラーク退縮―写真1

○身体的変化
・LDL 154→105 (サプリ「紅麹」の服用なし)

<この症例での考察・教訓>
1)食習慣点数は動脈硬化のレベルを知る上で、極めて有意義。

(LDLやA1cよりも、動脈硬化(プラーク)の程度を予測可能。)

サプリやスタチン剤の効果は、LDLではなく、視覚で確認されなければならない。

2)本症例の動脈硬化進行に関与した可能性のある食習慣として、
・牛乳の1回量が過剰。(腸内環境のバランスが崩壊した可能性あり)
・各種ヨーグルト・豆乳ヨーグルトの過剰摂取
(乳酸菌の過剰摂取で腸内環境のバランスが崩壊した可能性あり)
・脂質の多い食品が好みであり、継続して摂取していた。(食習慣点数が高値)

--考察に関する詳細は、『動脈硬化の未来塾』の各項目を参照ください----

****つぶやき****

○医者の無養生?

岐阜県の保険医協会のデータをご覧いただきます。
開業医が何歳で亡くなっているかの、非常にショッキングなデータです。

2019年3月22日付の日経メディカルの記事によれば、

 

図1 年齢別死亡数の分布

『 調査対象:2008〜2017年の10年間に、岐阜県保険医協会を死亡退会した85人について、死亡時年齢を調査した。内訳は、医科会員が60人、歯科会員が25人、男性が76人、女性が9人だった。

 集計の結果、死亡時平均年齢は70.8歳だった。

年齢別死亡数を見ると、60歳代が29人(34.1%)と最も多く、70歳代が19人(22.4%)、80歳代が17人(20.0%)と続いた(図1左)。厚労省の年齢別死亡数(図1右)では、80歳代にピークがあり、90歳代、70歳代、60歳というパターンだった。』

(私の見解)
一般に、10年前後の臨床修練を経て、40歳前後で開業される方が多いです。

その結果、恐らくですが、開業後15年程度を経て約50%はガンで他界され、残りの50%は動脈硬化による脳・心疾患で他界されていると推察可能です。

・ガンに関して
私の経験では、開業医が突然ステージ3〜4を宣告されることは珍しくありません。
開業医でも対応可能な職場健診レベルの健診では、ガンの早期発見には役立ちません。

ガンを早期に発見するには特別の検査が必要で、個人経営の医師は多忙と責任感から仲々仕事を休んで、予約のいる検査を受ける機会を持てません。

このことが大きな一つの理由。

・心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血などの動脈硬化関連疾患
高血圧やLDLの管理、塩分控えて、適度な運動は開業医だから簡単に管理可能です。
でも、我々医師は動脈硬化を進行させる本当の原因が、食習慣であることの教育を受けていません。(一般の方も同様です)

したがって、勤務医時代よりも経済的あるいは時間的にも自由度が高くなる開業医時代は高脂質・アルコール多飲に傾き、プラークの進行が早いのでは?との疑念が生じますので、科学的に調べてみました。

**************
当院で今までに8カ所の血管エコーを受けた男性のうち、脳・心血管イベントを認めない医師51名「医師24名(内開業医19名)、開業歯科医28名」---A群
医師、医療関係者、弁護士、社長、会社役員、僧侶など以外の方2229名---B群 に分けて、

1)脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル(0〜4)の頻度を調査しました。

A群   B群
リスク
レベル
人数 % 年齢
(標準偏差)
リスク
レベル
n % 年齢
(標準偏差)
0 5 9.8% 48.0±11.9 0 256 11.5% 44.3±11.4
1 9 17.6% 57.1±9.6 1 285 12.8% 51.8±10.0
2 8 15.7% 60.4±9.1 2 386 17.3% 56.6±10.7
3 12 23.5% 58.7±7.7 3 416 18.6% 59.9±9.8
4 17 33.3% 63.8±8.7 4 886 39.7% 64.3±8.8

(2024/4/19集計)

2)A群とB群でT-max (プラークの総量を表す指標)を比較しました。 

人数 T-max
(標準偏差)
年齢
A群 51人 7.59 mm(±2.92) 59.3(±9.8)
B群 2229人 7.69 mm(±3.19) 58.2(±11.8)

T-max=A-max+F-max+S-max+C-max mm(2024/4/19集計)

結果:
1)脳梗塞心筋梗塞リスクが極めて高いと判断されるリスクレベル3 or 4の割合は、A群(23.5%+33.3%=56.6%)とB群(18.6%+39.7%=58.3%)であり、両群間に有意差は認めなかった。

2) 総合的な血管汚れ指数であるT-max に関しても、A群とB群の間で有意差は認めなかった。

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<日系メディカルの記事に関する私の見解>

岐阜県の保険医協会の場合、死亡例の34.1%が60代の開業医師であったことの大きな理由は、多忙のために「休診しての予約の必要な--がん検診」を受けられなかったために、本人が気付いた時は進行ガンであった・・というケースが多いのではないでしょうか。

急性心筋梗塞や脳梗塞などによる、血管系での急逝は、上記の結果2)と死亡統計から考えにくい。

<見解に至る事実関係の整理>
事実1)脳梗塞や心筋梗塞の前兆症状を熟知している医師が、初期の判断が遅れて脳梗塞・心筋梗塞で死に至るケースは少ない。

事実2)開業医の血管プラークが特に進行している訳ではない。(上記)

事実3)ガンの場合は、かなり進行するまで症状が皆無の場合が多い。

事実4)医師の場合に、ステージ3〜4でガンが発見されることが少なくない。

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医師の死亡年齢に興味があったために上記の調査を行いました。

しかし、

60歳前後の男性の血管の状態が大変なことになっている事が判明しました。

(上記の表)

背景には、医学教育にプラークの増減に関する食育がいまだ存在していない為だと思われます。

本来、医師は病気(動脈硬化・ガンなど)の予防のプロであるはずなのに一般の方と同じレベルの血管プラーク肥厚が認められた事実は重く受け止めたい。

将来は、“やっぱり医師だから健康寿命が長いんだね“と言われる未来を夢見てます。

なお、
増加したプラークを減らすことに関しては、
(標準医学では、プラークを減らす治療や方策はまだありません)

つまり、どういうことかというと

・糖質制限の医療は効果なく、
・塩分制限の医療も効果なく、
・薬・サプリでLDLを下げる医療も効果なく、
・薬で血圧を下げる医療も効果なく、・・・
・運動やストレッチを推奨する医療も、あまり効果なく、・・
・玄米(無農薬でも)を食べるだけでは効果なく、
・青魚を食べるだけでも効果なく、
・地中海食にしても効果なく、
・MEC食でも効果はなく、
・厚生労働省が定める理想的な脂質摂取量は、成人では1日40〜60gこれでは効果なし
・プラントベースの食事にしても科学的な退縮理論がなく、不確実でしょう。

だから、現代人の食習慣が高脂質食に傾いた現代においては、職業プロでもある医師の血管も、一般の方の血管も同様に・・悲惨な状況になっているのでしょう・・残念!

タイトルが私の意向ではありませんが、

先入観なしに私の書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」(幻冬舎)をぜひ購読ください。

この書籍が、近藤正二先生の全国990村を実地調査して得られた結果を基に記載された学術的な書籍「長寿村ニッポン紀行」(1972/6/20 発行)の未来の「続編」と感じて頂ければ有り難いです。

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<参考資料>
以下の表は動脈硬化の未来塾 148)に掲載の、症例一覧(表4)です。

- レオナルド・ダ・ヴィンチ -

“ 視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ ”

“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”

2024年4月22日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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