脳梗塞・心筋梗塞の予防法

動脈硬化(プラーク)は治らないのか? 生活習慣の改善を前提としたRAP食で治せます。

Google 検索「頸動脈プラークは治るか」では、トップの返答として、
『頸動脈エコーで見たプラークについては、スタチンというコレステロールの薬を飲むことで、ある程度は改善可能です。』と案内されますが、本当でしょうか?

信頼できる二重盲検試験による情報(大規模臨床試験ENHANCE試験:米国)では、スタチン剤などのコレステロール低下薬を2年間服用しても、プラーク退縮は認められていませんし、ENHANCE試験中のプラークの増減のグラフからは、むしろコレステロールを下げることによって、プラーク悪化の傾向が疑われます。

B-ing検索「頸動脈プラークは治せるか」では、トップの返答として、『自然に治ることはありません』と太文字で大きく表示されます(2023年10月29日現在)。

ですから、動脈硬化(頸動脈プラーク)を治せる食事療法もAIはご存知ではありませんし、動脈硬化改善に効果があるとされる様々な情報には映像(視覚)での証明がなく、どれを信じていいのか、AIでさえ判断不能の時代であることをまず、ご認識ください。

今回は、「スタチン剤を服用しながら、2年間で頸動脈プラークが0.7mmも増悪中の症例で、スタチン剤を中止してRAP食を開始したら、ほぼ継続的にプラークが退縮し、その長期観察を行い得た1症例」を報告します。

「今回の報告に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<症例> 60歳男性
<初診時の8カ所の血管エコー>

<初診までの経過>

  • 2014年頃からSAS+睡眠時無呼吸症候群でCPAPを一時使用
  • 2015年12月 某クリニックで
     左頸動脈分岐部に4.2mmのプラーク
    を指摘される
     ***スタチン剤の服用開始となる***
  • 2016年6月 〜スタチン剤に追加で、本人希望もありエパデールS(900)2P,2xを追加で開始
  • 2016年11月 脳MRIにて、両側の脳に斑状の白質病変を指摘される。  
      左頸動脈分岐部に50%狭窄を指摘される
  • 2016年12月 主治医交代により、エパデールを中止してバイアスピリン(100)1,1xが開始になる。
  • 2017年9月 LDL=79 TG=107 HDL=70
  • 2017年11月 頃から両膝痛が出現し、ヒアルロン酸の注射などでも改善せず。
  • 2017年12月 左頸動脈分岐部のプラークが4.9mmへ肥厚
    (スタチン:アトルバスタチン(5)1T/隔日、服用しながら2年で0.7mmも肥厚)
  • 2018年1月下旬 当院初診 
     体重62Kg BMI=22.2 食習慣点数=388点  
    「甘いもの=好き、肉=好き、野菜=大好き、魚:大好き、揚げ物=普通、運動=かなりやっている」
    「2016年1月ころから調理パン:5回/w、酒類は毎日ではないが多飲歴あり(ビール500cc+日本酒2合+焼酎ロックで1合+ワイン3〜4杯+酎ハイ500cc)/d---ただし、週に3日のみ、約20年間」

<治療>

  1. 酒類の摂取制限(週に3日のみ ビール500cc摂取)
  2. アトルバスタチン(5)1T/隔日→中止
  3. バイアスピリン(100)1,1x→クロピドグレル (25)2T,1xへ変更
  4. エパデールS(900)2P,2x再開
  5. ラックビー微粒N,2g,2x 開始

<結果>

1)2ヶ月間も難治であった両膝痛が、RAP食開始後1〜2ヶ月で完治した。
2)5年9ヶ月後には、左頸動脈プラークが4.90→2.76mmへと明らかな退縮を認めている。(写真2)

体重は62.0Kg→62.5Kg 5年9ヶ月前と同じであった。

<経過の詳細>

  • 2020年10月下旬の検査では、プラークの増悪所見を認めたが、コロナ禍による自宅での仕事が増え、酒類の摂取量が増えたためと思われます。
  • 今までの経験では、プラークの増減と体重の増減には必ずしも正の相関はなく、本症例においても、体重が最も減少した時点でプラークは増悪に転じている事実から、「体重減≠プラーク改善」を再認識できた。
  • 初診時のLDL=77 (アトルバスタチン(5)1T/隔日中)であったが、スタチン剤を中止後も、LDLは76〜102で変動し、5年後の2023年8月下旬のLDL=77 であった。
    2018/1月下旬 2019/4月 2020/9月 2022/8月 2023/8月下旬
    LDL 81 76 92 102 77
    TG 132 227 110 130 109
    HDL 59 49 66 71 62
    つまり、プラーク自体はLDL粒子が積もり積もって肥厚した堆積物ではないことが推察されます。

<考察>

  1. スタチン剤の使用に関しては、先にも述べとおり、ENHANCE試験の生データでは、スタチン剤などを2年間服用するとプラークがやや増悪傾向を呈しています。N Engl J Med 2008; 359:529-533
  2. 当院の研究でも、スタチン剤を2年以上服用していた症例の群では、スタチン剤を服用していない群よりも明らかにプラークが肥厚していました。(動脈硬化の未来塾 68))

したがって、今回の順調なプラーク退縮の背景には、スタチン剤の中止もかなり貢献しているものと考えられます。

ですから、頸動脈狭窄を認める症例では、まずスタチン剤ではなく、可能ならEPA製剤やEPA+DHA製剤の服用が望ましいと考えられる。

3) 両膝痛の完治に関しては、RAP食でプラークが退縮し、関節組織の血流改善により、動脈硬化性の関節症が軽減・回復したためと考えられます。

他にも、RAP食にて脊柱管狭窄症(動脈硬化の未来塾 109))や、股関節痛&膝関節痛が完治した症例(動脈硬化の未来塾 101))も認められる。

3)プラークが順調に退縮したが、経過中にLDLの変動は特に認めていない。
つまりLDLが低値症例でも、さらにLDLを下げることなく、プラークが確実に退縮し得ることを確認できた。

この観察された事実は、「LDLは、より低い方がいい」とする医学の常識を打ち破る、非常に重要な観察結果だと思われる。

現在の動脈硬化治療に関するガイドラインは、プラークを退縮させることに貢献しているかどうか疑問である。

ガイドライン通りに医療を受けていても、この症例以外(動脈硬化の未来塾 121))でもプラークが悪化する場合があるという事実は広く共有されるべきである。

<まとめ>

  1. プラークが一旦退縮したとしても、途中でプラークが増悪に転ずることも少なくなく(同じ食習慣を続けていても)、長期の良好なプラーク退縮を維持するためには、プラークの定期的な測定と、食・生活習慣の確認と修正が必須と考えられた。(血管エコー実例研究 29))
  2. 現在、我々はスタチン剤を飲まないでプラークを治せる時代に生きている。

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- レオナルド・ダ・ヴィンチ -
“ あらゆるものの部分はそれ自身のうちに全体の性質を保っている。”

2023年10月30日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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