脳梗塞・心筋梗塞の予防法

RAP食なら、LDLが200以上でも動脈硬化は進行しないし、プラークは退縮する

動脈硬化に関して、私は実際のプラークの正確な変化だけを信じて研究してきました。

その結果、LDLが200以上でも大丈夫、動脈硬化の未来塾 75)という記事を掲載しましたが、LDLが400程度でも大丈夫と言える観察結果を得ましたので公表します。画像・映像での結果ですから・・1例でも十分なエビデンス:証拠になります。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」


『LDLが400以上でも、RAP食でプラークが退縮した1例』

Case 1. 55歳 女性
LDLが400以上でも、RAP食でプラークが確実に改善している事実をご覧ください。

図1

父:60歳心筋梗塞、78歳他界
兄:64歳:心筋梗塞 69歳健在

<初診時までの経過>

2004年4月 高脂血症(家族性)判明
2009年頃〜 スタチン剤+エゼチミブ(10)1服用開始
2015年12月 TC=284 LDL=188 TG=126 HDL=75
2017年7月頃 脊柱管狭窄症(頸椎&腰椎)
2018年1月  TC=340 LDL=238 TG=91 HDL=79
2018年12月  LDL=217 TG=123 HDL=73

2019年4月 当院初診   TC=311 LDL=235 TG=61 HDL=63
              こむら返り+ 肩こり+ 舌のピリピリ感+ 手足のしびれ+
体重:62Kg BMI=22.2 食習慣点数=537点
甘いもの:普通 肉:大好き 揚げ物:好き 魚::好き

<2019年4月初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=3.28mm((A-max)
右鎖骨下動脈=3.82mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=1.32mm
左頸動脈分岐部IMT=2.04mm(C-max)
右総頸動脈IMT=1.07mm 左総頸動脈IMT=0.97mm
右大腿動脈IMT=0.98mm 左大腿動脈IMT=1.70mm(石灰化)(F-max)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=10.84 mm

<初診時の服薬状況>
1) ロスバスタチン(5)1,1x (スタチン剤:コレステロール低下薬)
2) ゼチーア(10)1,1x (コレステロール吸収抑制剤:食事性&胆汁性)

治療:
RAP食を開始し、
1)ロスバスタチン&ゼチーア共に、説明の上、本人の同意を得て、中止していただいた。
2)EPA製剤900mgx2-開始
3)ビフィズス菌製剤 2.0g,2x 開始

結果:
<プラークの経過>

血管の部位 2019/4(max-IMT) 2019/12(max-IMT)
腹部大動脈 3.28 mm 2.16 mm:(図1)プラーク改善
右鎖骨下動脈 3.82 mm 3.03 mm:(図1)プラーク改善
左総頸動脈 0.97 mm 0.87 mm プラーク改善

予定通りにプラークが退縮した。


<症状の変化>

症状 2019/4 2019/12 コメント
肩こり あり なし プラーク減で筋肉の血流改善
こむら返り あり なし プラーク減で筋肉の血流改善
舌のピリピリ感 あり なし プラーク減で、動脈の三叉神経圧迫が減?
手足のしびれ あり なし 脊柱管狭窄症 改善には時間必要
胸のどくどく感 あり なし 更年期障害?

考察:
1)ゼチーアの中止に関して:
Turley SD et al. Prev Cardiol 2003 Winter; 6(1):29-33.64.を参考にした製薬メーカーの作図から、「1日400〜500mgの食事性のコレステロールや、胆汁性の800〜2000mgのコレステロールに対する吸収の抑制作用」であって、
現代人の平均的な1日の脂質摂取量(60〜70g)の吸収を抑制する作用ではなさそう?・・

また、人では、ゼチーアによるTGの低下作用は14.0%(メーカー資料)で軽度であり、食事中の脂質吸収を大きく阻害する薬ではなさそうである事、プラーク難治例にゼチーア錠が奏功した症例も経験していないことから、とりあえずスタチン剤&ゼチーア(エゼチミブ)錠を中止して、RAP食とEPA製剤+ビフィズス菌製剤のみでのフォローを選択。

3) 本例で明らかなように、LDLは血管プラークの原因とは考えられない。
なぜなら、LDLがかなり上昇しているのに、プラークは明らかに減少している。

LDLの裁判なら、LDLは動脈硬化の蔓延に対して、無実の罪を着せられた冤罪の被告人となります。「血管プラークの観察結果という、LDLの無実を立証する物的証拠が存在」するからです。LDLは状況証拠のみで犯罪者扱いを受けてきました。


Case2. 『LDLが200以上でも、RAP食でプラークが退縮した1例』

Case 2. 42歳 男性

図2

主訴:健診で頸動脈プラーク指摘 & 高脂血症
家族歴:両親:兄弟に血管病なし
現病歴:

1996年6月頃  高脂血症指摘あり。
2015年5月頃 クレストール半年服用後・・自己判断で中止。
2016年6月頃 コレステロールが高いので、
        頸動脈エコーを勧められ検査:頸動脈狭窄指摘あり
2017年12月  TC=388 LDL=289 TG=117 HDL=58
2018年12月  頸動脈エコー:左:プラーク+と説明あり。
*****************
2018年12月下旬  当院初診
体重61Kg BMI=20.1 BP=120/64 食習慣点数=629点  甘い物:普通、 肉:好き
魚:好き、 揚げ物:好き、 野菜:好き、 運動:大いにやっている

現在の症状:
こむら返り+ 肩こり+ 頭痛+(軽度:1/2w)

特別な食習慣:2018年4月から12月まで「コーヒーにバター30g+MCTオイル30g入れて毎日1杯」

服用中の薬:
なし

8カ所の血管エコー:
腹部大動脈IMT=2.03mm (A-max)
右鎖骨下動脈=2.84 mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=0.79 mm
左頸動脈分岐部IMT=3.29 mm(C-max)
右総頸動脈IMT=1.07 mm 左総頸動脈IMT=0.92 mm
右大腿動脈IMT=1.74 mm(F-max) 左大腿動脈IMT=1.07 mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)******

治療:
RAP食+EPA製剤900mgx2+ビフィズス菌製剤2.0g,2x 開始

結果:
<LDL他>

採血項目 2018年12月初診時 2019年6月 2019年11月
LDL 263 204 241
TG 73 59 66
HDL 87 78 81

<RAP食開始時と11ヶ月後の血管プラークの状況>

血管の部位 2018年12月(max-IMT) 2019年11月(max-IMT)
右鎖骨下動脈 2.84 mm→ 2.45 mm(図2)プラーク改善
右腸骨動脈 2.12 mm→ 1.89 mm(図2)プラーク改善
左頸動脈分岐部 3.29 mm→ 2.78 mm プラーク改善

LDLが1年近くも200以上で経過するも、プラークは順調に退縮中。
LDL高値は決してプラーク退縮にハンデイとはなっていない。

<症状の変化>
症状の変化は不明(確認とれていない)

考察:
脂質栄養学 第20巻、第1号(2011)の総説としての論文「コレステロール理論の諸問題」(浜崎 智仁)をお読みになれば、LDL=悪玉説が誤りで、むしろ善玉とみなされるべきでは?・・との考えに至るでしょう。

LDLが高いままで、プラークを退縮させるという・・現代医学を信じる人には奇跡の治療ともいえる医術ですが・・「・・それでもLDLが高いから心配・・」などと、・・心配されるDrが非常に多いのが残念です。

「コレステロールが高いけど、プラークが少ない人」よりも、
「コレステロールは低いけど、プラークが肥厚している人」を最も心配してさしあげるべきです。

体質で、肝臓でのVLDL産生が多いために、採血でのTG が1000〜2000以上であっても、RAP食ならば、カイロミクロンによるTGは低下しますから、プラークが現状維持どころか・・退縮します動脈硬化の未来塾 98)の症例。
「備考:血中のTG(中性脂肪)=カイロミクロン(食品中の脂質量に依存)+VLDL(肝臓で生成されるリポ蛋白)」

これは、肝臓で作られているVLDLが動脈硬化を進行させないという証明です。写真・映像診断ですから1例でもエビデンスになります。

同様に、
今回の症例も、肝臓で作られているLDLが動脈硬化を進行させないという証明です。

生物進化論的に考えれば、肝臓で作られるLDLやVLDLは動物が生きていく上で、必須な成分であり、常にその一定量が動脈の中を流れているわけで・・、そのような物質(LDLやVLDL)が動脈内にプラークとして堆積し、健康を害するような状況を・・進化の設計図作成者である神は・・決して見落とすはずがありません。

スタチン剤の服用は、動脈硬化を治せる医療にとってはブレーキですから、脅されても決して弱気になってはいけません。治したいなら“耳なし芳一“になりましょう。 動脈硬化の未来塾 52)  動脈硬化の未来塾 68)

LDLに悪玉と命名するのは、神を侮った命名行為だと思います。

動脈硬化の犯人は、食事によって体内に入ってくる過剰な脂質です。食事由来の過剰な量のカイロミクロンが長時間、動脈の中を流れることで・・流体力学的に・・動脈硬化が進行(動脈壁に脂質が沈着=プラーク)します。

このことの解説を図でご理解ください。
(血管エコー・実例 29)の2019年12月追記記事を参照)

2019年12月24日記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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