脳梗塞・心筋梗塞の予防法

49歳で心筋梗塞になった女性、原因不明とされたその原因とは?現代医学の盲点を解明

現代医学の常識が、命に関わる病気の予防の妨げになるなど、たとえ1例でも、あってはならないことです。

今回、健康に良かれと思って行動したことが、心筋梗塞を招いてしまったと思われる症例を経験したので、「現代の健康常識を疑いましょう」という警鐘を込めて報告します。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

症例 50歳 女性 BMI=18.1 (やせ型)
<主訴> 
心筋梗塞後にステント治療などを受け、8ヶ月後に冠動脈の再狭窄を指摘されたので、1年後の再検査までに、なんとか冠動脈の狭窄を治したい。
<現病歴>
図1に図示

・2021年2月頃から、不整脈出現
・2021年3月から 不整脈に対して、抗不安薬の服用で様子観察
・2021年8月から 心臓の興奮性を抑える薬:ビソプロロールフマル酸(0.625)1T,1x開始
・2021年12月中旬 不整脈は出なくなり・・一安心、でも・・薬で押さえ込んでいるだけ。(病魔は進行中でした)でも・・この頃から・・左目の飛蚊症を自覚。
・2022年2月 健診で、左眼底出血を指摘され、眼科を受診。左目の視界が歪んで見える症状があるも、眼病の具体的な病名の告知なく(おそらく、網膜静脈閉塞症や加齢黄斑変性類似の状態か?)、内科への受診を勧められた。なお、健診の際に、頸動脈プラーク&石灰化も指摘された(詳細は不明)。
2022年4月 内科にてスタチン剤であるプラバスタチン(5)1T/dを処方され服用開始。
・2022年6月中旬 LDL=103 TG=55 HDL=53

・2022年7月中旬 登山帰宅途中、列車内で心筋梗塞を発症し救急搬送、入院。
・2022年8月初旬 冠動脈1本ステント留置
、他の2カ所の狭窄部位はバルーン拡張術。4日後退院。退院時処方=ロスバスタチン(2.5)2,1x+オルメサルタン(20)1+バイアスピリン(100)1+ランソプラゾール(15)1+ビソプロロールフマル酸(0.625)1+エフィエント(3.75)1,1x-。・ニトロペン舌下錠(0.3)1回1T、頓用、胸痛時、5回分、・センノシド12mg,1回2錠,頓用 便秘時、10回分
・2022年9月中旬 LDL=60 TG=86 HDL=44
・2022年10月  皮膚の黄染(肝障害なし)にてスタチン剤を減量し、ピタバスタチン(1)1T,1xへ変更
・2023年1月 皮膚黄染が変化なく、スタチン剤を中止し、エゼチミブ(10)1,1xへ変更。
・2023年3月 当院のホームページを閲覧。
2023年4月 様子観察の心カテ(心臓カテーテル造影検査)で1本、冠動脈狭窄指摘され、1年後の経過観察とされた。 
・2023年6月中旬  冠動脈の狭窄を治したいというご希望で当院受診

<初診時の8カ所の血管エコー所見>

脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=レベル4(0〜4)。(図2)T-max=2.07+3.46+1.85.+1.94=9.32mm (女性の80歳相当)

<考察>
1)「49歳と若く、女性で酒もタバコもやらず、高血圧や糖尿病でもなく、LDLが低いので、心筋梗塞になるのは信じられない」
とか「・・・・@@さんが心筋梗塞になる原因がない・・ありえない・・」この言葉は、入院中に病室に廻診いただいた専門医の先生方の言葉です。

おそらく、飲酒歴なし、喫煙歴なし、昔からLDL低値でしかも3ヶ月前にスタチン剤の服用を継続・・なので・・現代医学の常識では・・血管プラークの存在を疑わなくても責任を問われないのでしょう。 事実は写真1に示す通りに血管プラークはいたるところに堆積しています。(写真1)

不整脈が出現した時点・・あるいは眼底出血が生じた時点で、8カ所の血管エコーを受けていれば、この症例の心筋梗塞は防げたに違いありません。

図2に赤丸で示すごとく、心筋梗塞や脳梗塞をきたしても全く不自然ではない状況です。
図2のグラフの縦軸の値は、S-max>F-max>A-maxですから、右鎖骨下動脈のmax-IMTであるS-maxの値を採用。

一部の自治体では、右鎖骨下動脈の血管エコーが、頸動脈エコーと同時になされています。

各自治体において、少なくとも右鎖骨下動脈のエコーが標準の検査に採用されることが望まれます。

2)血管プラークが、なぜ堆積したのでしょうか?

図3をご覧ください

まず、若い時からの食習慣として
●菓子パンor味付きパンを毎日一個摂取
●パンにバターを塗って毎日1枚摂取。

●心筋梗塞の13ヶ月前、不整脈のお薬を服用するようになってから、健康のために、大好きでもあるナッツ類のバターピーナッツ30粒を毎日食べるようにした。(動脈硬化の未来塾 140) 
●心筋梗塞の4ヶ月前には、眼底出血と視野に歪みが生じたため、健康に良かれと思って亜麻仁油を小さじ1杯/dを飲用しました・・・、これらの健康のための努力が仇となり・・(動脈硬化の未来塾 130) (動脈硬化の未来塾 54) 冠動脈のプラーク増加による狭窄部分が急速に狭くなり・・心筋梗塞を発症したのでしょう。

上記の4つの食習慣だけによる脂質摂取の総和は49.6g/dとなります。(図3)

おそらく、菓子パン毎日&パンにバターの習慣と、当院の食習慣点数=481点(理想は200点以下)と、以下のような脂っこいものを好む食習慣のために、徐々にプラークが堆積していたと思われます。

食の好み:魚-大好き、肉-好き、揚げ物-大好き、甘いもの-大好き、野菜-大好き、運動-大いにしている。

参考までに、大好きな食品:バターピーナッツ、ケーキ類。 好きな食品:鶏皮、ソーセージ、鳥・魚介類のから揚げ、霜降り肉、トンカツ、焼きそば、塩サバ、サンマ、刺身のトロ、ハンバーグ、ポテトチップス、揚げ煎餅、天ぷら、菓子パン、チョコ、クッキー、シュークリーム、バター付きパン、ドーナツ、 「週に1回 ハンバーガー」 「週に1回から揚げ料理」・・でした。

以上により・・・心筋梗塞の原因と理由は明白です
「日頃から脂質摂取が過剰で、ある程度のプラークが堆積していると想定される状態において、健康に良かれと思って摂取した食品が脂質高含有だったので、右鎖骨下動脈の部位同様に冠動脈内のプラークも急速に進行した結果、心筋梗塞を発症した」と考えるのが合理的です。

3)心筋梗塞の発症3ヶ月前からスタチン剤を服用したことも、マクロファージの貪食能(プラークの自然治癒力のシステム)を低下させ、冠動脈プラーク増悪に関与した可能性を否定できません。(動脈硬化の未来塾 68) (動脈硬化の未来塾 52) (動脈硬化の未来塾 130) (動脈硬化の未来塾 119) (動脈硬化の未来塾 77)

4)退院時は、食習慣に関して・・ざっくりと1600Kcalにカロリーを制限してください。との指導だけでしたが、本人の食習慣は変わっていません。(図3)

また、カロリー摂取に関して、昭和35年の日本人の平均のカロリー摂取量は2,096Kcal, 平成29年のそれは1,975Kcalとされています。 なので、カロリー摂取は昔も今もほとんど変わりません。

昭和35年頃に比べて、現代のように心筋梗塞や脳梗塞を発症する例が飛躍的に増えてしまった原因は、カロリー摂取や糖質摂取が増えたからではありません。脂質摂取が飛躍的に増えたためでしょう。 (なお、現代の方が糖質摂取量はかなり少ない)

一方で、日本人の脂質摂取の平均は昭和35年で約25g、平成29年では若年で約67g、老人で約59gです。最近では、昔の2倍以上も脂質摂取量が増えています。

今後は、この症例を教訓にして、カロリーをざっくりと指導するより、脂質摂取の制限を、本人の過去と現状の食習慣を理解した上で、より具体的に食事指導がなされるべきでしょう。

食習慣の指導は動脈硬化に最も効果的な“薬”なので、間違った食習慣指導は、“毒”にもなりえます。

本症例は、そのことを物語る貴重な1例となるに違いありません。

5)心筋梗塞後の、退院時には「青魚を積極的に摂取するように」との指導があり、退院後は鯖の味噌煮缶を2缶/週のペースで食べていた

この件に関して、患者様の日頃の・・特に入院1年前からの食習慣などに関心を持っていただければ、脂質摂取過剰が心筋梗塞の原因かも?と・、少なくとも想定できたはずです。

そうすれば、
(脂質の多い)青魚を推奨するという逆指導もしないで済んだかもしれませんし、
8ヶ月後の冠動脈の再狭窄は防げたかもしれません。

6)この症例だけをご覧になり、動脈硬化(プラーク堆積)の原因は「脂質摂取過剰だ!」と、早合点するのは危険です。

例えば、普通の牛乳&普通のヨーグルトを摂取していた人が、無脂肪牛乳&脂肪0ヨーグルトに変えた途端に、プラークがありえないほど急速に増大した症例があります。(動脈硬化の未来塾 122)

また、ノンオイルドレッシングでプラークが悪化した症例(人工甘味料やレモン果汁含有製品)を経験するなど、腸内環境のバランスを破壊する食品は、たとえ低脂質であってもプラークの堆積を招く恐れがあります。 (血管エコー実例・研究をビジュアル解説 29) (動脈硬化の未来塾 132)

<まとめ>
1. 健康のためにと、ナッツ類の多食や植物油(亜麻仁油・オリーブ油・エゴマ油・ココナッツオイル・・・などなど)の飲用を継続してはいけない。

2. 不整脈、眼底出血、等々の動脈硬化(プラーク堆積)が原因と目される症状が出た場合は、8カ所の血管エコーを積極的に受けるべきである。

3. コレステロール低下薬(スタチン剤)を服用して、3ヶ月後に心筋梗塞を発症したという事実は、重く受け止めなければいけない。

4. 心筋梗塞や脳梗塞などは、冠動脈や脳動脈内にプラークが堆積し、その増加で発症する。

動脈硬化(プラーク堆積)の原因は、LDL高値、飲酒、喫煙、などよりも、現代では食習慣による場合が多いことを医療側も再認識すべきである。

(つぶやき・・)
若者の突然死を防ぎたい・・

管理栄養士の方に・・現代人の動脈硬化の進行具合を想定するのに役立つ食習慣のチェック項目やその点数化は、私の書籍に記載していますので、是非その実用化をお勧めいたします。

次回は、40代で心筋梗塞になった症例の血管エコー・食習慣・食習慣点数に関する検討を報告予定です。

レオナルド・ダ・ヴィンチの名言

“ちっぽけな確実さは大きな嘘に勝る。”

2023年7月3日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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