脳梗塞・心筋梗塞の予防法

納豆、ナッツ、カカオ高含有チョコ、サバの水煮缶、亜麻仁油の頻回摂取が
動脈硬化(プラーク)を進行させたと思われる1例

現在は様々な健康情報が飛び交っています。情報源の先生が健康のためにいいとおっしゃる食品が、その頻回摂取によって・・・実は、血管のプラークが悪化するという深刻な事実を・・お知らせいたします。

ほとんどの場合「便秘にいい・・お肌にいい・・、体重が減る・・、血圧が下がる・・、コレステロールが下がる・・、血管年齢が改善・・・、血液がサラサラに・・といった類の健康ですね。 脂質を多くとって、糖質を制限すれば・・A1cは下がり・・痩せるのでしょうが、血管がプラークでボコボコになってもいいのせしょうか? 選ぶのはあなたです。

例えば、「ある食品の頻回摂取で、コレステロール:LDLが下がったり、L/H比が低下したり、A1cが下がったり、便秘が改善したり、肥満の体重が減少したら・・・・動脈内のプラークのことは夢にも考えずに・・喜ばれるでしょう・・」

でも・・・

健康寿命は年齢ではなく、T-max(人体におけるプラークの総量に相関する値)で決まります。このことは、書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の原因は油」(幻冬舎)2018 で証明しています。

ですから・・・

「血管プラークが、エコーという“写真判定”で悪化したなら、その食品の頻回摂取は健康に対して“アウト”なのです。」

バレーと同じで、目が見える観客・監督ならビデオ判定で納得します。

<今回、2年7ヶ月ぶりに当院を受診され、急速にプラークが肥厚した症例を経験し、その原因を知り得たので報告します。>

まず、初めにプラークが2年7ヶ月で急に肥厚した事実を“写真判定”でご覧ください。


(写真1)

症例1. 66歳 女性

初診時の<8カ所の血管エコー所見>
1. 腹部大動脈max-IMT=2.05mm
2. 右大腿動脈max-IMT=1.02mm
3. 左大腿動脈max-IMT=1.02mm(写真で提示)
4. 右鎖骨下動脈max-IMT=1.19mm
5. 右頸動脈分岐部max-IMT=0.77mm
6. 左頸動脈分岐部max-IMT=1.75mm(写真で提示)
7. 右総頸動脈max-IMT=0.80mm
8. 左総頸動脈max-IMT=0.74mm
  *:脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=(1に近い)2 (0〜4)に評価

2016年3月:8カ所の血管エコーを行なって、脳梗塞・心筋梗塞のリスクレベル2でしたが、1に近いレベル2でしたので、RAP食を強く勧めることもせず、2〜3年後の受診を勧めていました(当時66歳)。リスクレベル・プラークに関しては(動脈硬化の未来塾 31))を参照ください。

2018年11月:予定通りに、約2年7ヶ月ぶりに受診されましたが、プラーク肥厚に驚きました・! (写真1)

納豆や、鯖缶(水煮缶)、ナッツ、亜麻仁油、カカオ78%含有チョコの頻回摂取(他の食習慣に変更なし)が原因だと思われます。

「66年間も普通に食べて生きてきた食習慣で、左大腿動脈のプラークが僅か1.02mmしか肥厚していませんでしたが、

2年7ヶ月間で1.02mm→2.07mmへ急速に肥厚していたのです(69歳)。」

あと2年7ヶ月で3.12mm(約60%狭窄)へと肥厚し、次の2年7ヶ月後には4.17mm(約80%狭窄)となり、5年以内にはかなりの確率で脳梗塞、心筋梗塞に至ると考えられる症例を経験しました。ちなみに5年後は74歳になられます。(写真2)


(写真2)

症例1の方の66年間の食習慣で1.02mmだけ堆積した左大腿動脈のプラークが、たった2年7ヶ月で2.07mmへ肥厚したのですから、2年7ヶ月間で追加になった食品の頻回摂取が犯人であることは間違いありません。(ビデオ判定が可能だからこそわかる真実)

「プラークが急速に肥厚した2年7ヶ月間の食習慣における変化を列挙」

1)最近の6ヶ月間は真面目に毎日1個の納豆を食べていた。(昔から納豆は週に2〜3個は食べていましたが、テレビの影響で毎日食べることにした)
2)約2年間、おやつにミックスナッツを毎日10粒食べていた。(テレビでミスユニバースはおやつにナッツを毎日10粒食べているが、とくに昼に食べるといい・・と聞いたので、自分も真似していた)
3)2年前から週に、抹茶チョコ2個+78%カカオ含有チョコレート4個を食べている。(抹茶やカカオ78%のチョコが健康にいいと聞いたので)
4)6ヶ月間は鯖の水煮缶を週に1缶ペースで、1缶の2/3相当を食べた。(テレビなどで、「鯖の水煮缶」が健康にいいと聞いたので、値段が高くなったので8月で止めた)
5)亜麻仁油が健康にいいと聞いたので、この2年間は大さじ2/3程度(約10cc)をフランスパンにつけて、週に2〜3回は食べていた

<考察>

  • 植物性の脂質も過剰に頻回摂取すると・・身体いずれかの動脈(脳動脈、冠動脈、大腿動脈、頸動脈、大動脈・・・)などにプラークが急速に溜まります。 もともとプラークが肥厚している人ならば、重大な身体的障害が・・1〜2年後に生じることになります。
  • 通常の食習慣なら、プラークはゆっくり肥厚しますが・・・健康に良かれと・・頻回に摂取すると・・急速にプラークが肥厚し・・でも、脳や冠動脈の拡張がプラーク肥厚のスピードに追いつかず、急速に血管内腔が狭窄状態となり、一過性脳虚血発作・脳梗塞・不整脈・狭心症・発作性心房細動・心筋梗塞・発作性心房細動・その他のお多くの疾患を起こしやすいのです。(動脈硬化の未来塾 7))
  • テレビの健康番組をよく見る人は・・間違った情報で努力されている場合があり、血管エコーはせめて年に一度は必要になります。
  • 毎年「1万人ずつ心不全患者が増えている」・・との報道がありましたが・・
    ・・心不全を増やしている元凶の一つはテレビなどの情報かもしれません。
  • 心不全の予防や脳梗塞再発予防には・・・スタチン剤を飲まない「RAP食」(血管エコー実例 29))をお勧めいたします。
  • スタチン剤を使わない心不全予防のエビデンスが権威ある臨床研究論文で存在します。
    Ornish D et al. Can lifestyle changes reverse coronary heart disease? Lancet. 1990; 336:129-33.
    Abstract
    In a prospective, randomised, controlled trial to determine whether comprehensive lifestyle changes affect coronary atherosclerosis after 1 year, 28 patients were assigned to an experimental group (low-fat vegetarian diet, stopping smoking, stress management training, and moderate exercise) and 20 to a usual-care control group. 195 coronary artery lesions were analysed by quantitative coronary angiography. The average percentage diameter stenosis regressed from 40.0 (SD 16.9)% to 37.8 (16.5)% in the experimental group yet progressed from 42.7 (15.5)% to 46.1 (18.5)% in the control group. When only lesions greater than 50% stenosed were analysed, the average percentage diameter stenosis regressed from 61.1 (8.8)% to 55.8 (11.0)% in the experimental group and progressed from 61.7 (9.5)% to 64.4 (16.3)% in the control group. Overall, 82% of experimental-group patients had an average change towards regression. Comprehensive lifestyle changes may be able to bring about regression of even severe coronary atherosclerosis after only 1 year, without use of lipid-lowering drugs.

    要約: 包括的なライフスタイルの変化が1年後に冠動脈アテローム性動脈硬化症に影響を及ぼすかどうかを決定するための無作為化された前向き試験では、実験群28例(低脂肪ベジタリアン食、禁煙、ストレス管理訓練、中等度運動)、標準医療(対照)群20例に分けた。定量的冠動脈造影によって195カ所の冠動脈病変を分析した。平均直径狭窄率は、実験群28例で40.0(SD 16.9)%から37.8(16.5)%に回復したが、対照群20例では42.7(15.5)%から46.1(18.5)%に進行した。 50%以上狭窄した病変のみを分析した場合、平均直径狭窄率は、実験群で61.1(8.8)%から55.8(11.0)%に退縮し、対照群(標準医療群)では61.7(9.5)%から64.4%へ進行した。全体的に、実験群の患者の82%は、退縮のレベルは同様であった。包括的な生活習慣の変化は、脂質低下薬を使用せずに、わずか1年後にはかなり進行した冠動脈アテローム硬化症の退縮をもたらすことができるであろう。

    下の論文は、Lancetの論文のその後の経過観察結果を報告した論文です。

    Ornish D et al. Intensive lifestyle changes for reversal of coronary heart disease. JAMA 1998 Dec 16;280(23):2001-7.
    「食事療法群では1年後、5年後も動脈硬化は退縮が継続したが、スタチン剤などを用いる標準治療群では、1年後、5年後も更に冠動脈狭窄率の進行が続いた。結論として、標準治療の群が、スタチン剤を使わない食事療法群よりも2倍以上も心臓事象(心不全、心筋梗塞など)が発生した」と、報告されています。

    参考までに、日本の「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)」には615編の論文が引用されていますが、1)Lancetの論文は引用されていませんし、2)JAMA の論文は引用されていますが、動脈硬化の退縮をきたした事実や、心臓事象が2倍以上も減少した事実などは引用されていません。長期の運動が動脈硬化の退縮に寄与することや、飽和脂肪酸などに関しての引用に止まっています。
  • Lancet掲載論文の研究結果を裏付ける事例を経験しています。(動脈硬化の未来塾 77))つまり、スタチン剤を使っての心筋梗塞2次予防のガイドラインに沿った診療スタイルでプラークが悪化したので、RAP食で介入したらプラークが退縮した実例です。
  • 身近に、テレビの健康番組をよく見る人が、TIA(一過性脳虚血発作)や脳梗塞、狭心症、心筋梗塞で・・・救急車のお世話になっている人はいませんか?

    せめて、ご自身の両親にはこの情報をお伝えください。インターネットができないご両親には私の書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の原因は油」(幻冬舎)2018年をご実家に送付されてはいかがでしょう。

    また、健診の採血や血管年齢検査で褒められたり、現在は元気でも・・決して血管の中のプラークの状態を見るまでは・・安心してはいけません。
    (最近は両親より先に脳梗塞や心筋梗塞になる若者が増えています。会社や町の現状の健診では予防不可能であることを証明しています。最近放送のNHK“鶴瓶の家族に乾杯”米子でもそのようなお話が・・・)
  • 頸動脈エコー検査は、受けないよりも受けた方がいいのですが・・・本例のごとく、頸動脈プラークは悪化していないのに、他の部位で急速にプラークが肥厚することがありますので、頸動脈以外の血管もエコー検査をしていただく必要があります。

    ちなみに症例1の、2018年8月におけるその他の血管のプラークの状況を提示します。

    1. 腹部大動脈max-IMT=2.05mm→1.99mm
    2. 右大腿動脈max-IMT=1.02mm→1.02mm
    3. 左大腿動脈max-IMT=1.02mm→2.07mm(写真で提示)
    4. 右鎖骨下動脈max-IMT=1.19mm→1.28mm
    5. 右頸動脈分岐部max-IMT=0.77mm→0.77mm
    6. 左頸動脈分岐部max-IMT=1.75mm→1.81mm(写真で提示)
    7. 右総頸動脈max-IMT=0.80mm→0.67mm
    8. 左総頸動脈max-IMT=0.74mm→0.74mm

<まとめ>

現代の日本人が陥りやすい・・・血管プラークが溜まりやすい・・つまり・・健康にダメージとなる健康情報がこの数年、特に目立ちます・・Drの解説不足な発言の「@@が含まれているから##は健康に良い・・」にご注意・・その「その##には@@以外にも多くの**が含まれています」

ですから・・

1. 青魚の頻回食。(動脈硬化の未来塾 86))
2. 納豆の頻回食。(動脈硬化の未来塾 87))  (血管エコー実例 29))
3. オリーブオイル他の健康にいいオイル全て、その頻回摂取。(動脈硬化の未来塾 54))
4. サバの「水煮缶」の頻回食。
5. ミックスナッツ・その他のナッツ類の頻回食。
6. カカオ@@%高含有チョコレートの頻回食。
7. 無脂肪ではないヨーグルト(豆乳製、牛乳製を問わず)の頻回多食・多飲。(動脈硬化の未来塾 55)) (動脈硬化の未来塾 87))
8. 無脂肪ではない豆乳、無脂肪ではない牛乳の頻回多飲。

   などに、くれぐれもご注意ください。

注意)上記の8種類の食品の特徴は、全て脂質が多い食品ですが、頻回に、または多食しなければプラークが急速に溜まることはないでしょう。昔の日本人は脂質摂取量が少なかったので青魚を普通に食べてもよかったのですが・・現代人はその辺の事情を理解しておく必要があります。昔の食習慣に関しての記述は(動脈硬化の未来塾 87))をご覧ください。

<つぶやき>

バレーもテニスも野球も・・アウト、セーフの判定は“写真判定”になりました。動脈硬化の判定も写真判定にすべき時代で、動脈硬化の明治維新をもたらすのは、心あるDrや医療関係者及び皆様自身の“目”からの情報かと・・期待を込めて。(動脈硬化の未来塾 11))

長い間の血管プラークの観察から・・・
“動脈硬化という病気”は・・毛細血管や小〜大動脈が脂汚れをきたすために・・各組織が循環障害に陥り・・“毛細血管・血管・頭髪・皮膚・腱・骨・軟骨・心臓・脳などの避けられない自然経過としての老化を、さらに急速に早める病気”・・と、理解できます。



2018年11月14日 記載
真島消化器クリニック

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